理事長ブログ「忘己利他」N22

ビジネスコミュニケーション「仕事がはかどる話し方のコツ」
 ◆よりよく生きるためのツール ~ 究極のコミュニケーション能力を磨く ~

改訂第2版 

話力総合研究所 理事長 講演中

話力総合研究所 理事長
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「21.聴き手の心に響かせろ 

(1)共感させるには

 共感させる話とは、相手に感じさせ、相手の心を揺り動かす話のことです。聴き手の心に響かせる話です。話を聴かせて、理解させ、確かにそうだ、なるほどと思わせる。感動させる。涙を流させる。どれも共感です。

 相手を共感させるのは難しいですね。当然ですが、相手は自分ではないですから。生まれも、育ちも、経験してきたことも違います。それゆえ、興味も考え方も感じ方も違うでしょう。そういう相手に話を理解させ、気持ちの変化を起こさせるのですから、至難です。

 話し手が日頃共感できないようであれば、共感させる話はまず無理です。日頃からものごとに感じる心、すなわち感受性がなければ、相手を共感させる話などできるはずがありません。

 では、共感性があるかどうか、次の質問に答えて自己点検してください。

・人の話を聴いて涙を流すなど感動したことがあるか?

・ドラマや映画を見て涙を流すなど感動したことがあるか?

・本を読んで涙を流すなど感動したことがあるか?

・電車に乗っていて、自分の前に立たれたとき、言われる前に席をつめているか?

・満員電車でドア近くに乗っていて、後方の乗客が降りようとしている時、一度降りてあげられるか?

・話をしている時に相手がそわそわしたり、時計を気にしたら「時間がないのか?何か用事か?」と声をかけるか?

 いかがですか? 皆さんは共感性ありですよね。電車で席を詰めないで知らん顔なんてことはないですね。満員電車で自分が降りるつもりがないと、他人が降りようとしていても降りずにがんばっていませんか?話の最中に相手が時計を見ていたら、まさか「時計壊れているのか?」などと声をかけたりしないでしょうね。

 共感性のある人は、努力すれば共感させる話ができるようになるでしょう。とはいえ、どんなに共感性を持っていたとしても、次のような話では難しいです。

・わからない話

 話が難しすぎてわからない。話が飛んだり、ごちゃごちゃしていてわかりにくい。抽象的な話が多く、イメージがわかない。

・退屈な話

 話が平坦で退屈。内容がつまらない。本筋に関係ないことばかり話している。

・心に響かない話

 どんなに上手に話しても、心に響かない内容では共感させられません。例えば、数学や物理学の講義のような話では、一般の人は感動しないですね。なかには、F=maやE=mc²など自然界の美しい法則性に、「神」の存在を感じて感動する人もいるでしょうが。。。

 いろいろお話ししました。共感させるには、自身の共感性を磨き、聴き手の心に響く内容を、わかりやすく、聴かせ続ける工夫をしながら気持ちをこめて話すことです。ぜひ、意識して取り組んでください。

(2)共感性を磨け

 聴き手の心に響く話をするためには、まずは自身の共感性を磨くことです。感じる心、感動する心を養うことです。問題意識をもって、努力なさってください。

 どうすればよいか?まずは、他人の行動、言動から感じることです。自分がされたらどう思うか?立場を逆転させて心に問うてみることです。

 私は“麺食い”です。ラーメン、うどん、そば、パスタが好物です。お昼に一人で出かけますと、時間調整もかねて、たいていこうしたお店に入ります。お昼時混雑したラーメン店での出来事です。カウンター席でラーメンを食していました。私の左右に30前後の男女がすわりました。知り合いだと気づけば席をつめるのですが、それぞれだまって席につきましたので、気づきませんでした。注文したラーメンが出されると、私の右隣の女性が左隣の男性に、「箸いります?はい、これ。」箸を持った手が私の目の前を通り過ぎます。私はラーメンの手をとめ、女性の手が元の位置に戻るのを待っていました。また、「レンゲいります?はい、レンゲ。」レンゲを持った手が私の目の前に伸びます。2度目、さすがに驚いた表情をしました。左隣の男性が私の表情にようやく気づき、「あっ、すみません!」何かを行う前に自分がされたらどう感じるか。何かを言う前に、自分が言われたらどう感じるか。日頃から考えるようにすると共感性が高まります。

 また、時々「心のガードを解く」ことも大切です。私たちはどちらかというと日頃感情を表に出さないようにしていませんか?年齢が上がるとともに、この傾向が強くなっていないでしょうか?毎日毎日心をガードして生活していませんか?これは、感情を表さない訓練をしているようなものです。できれば、時々心のガードを解いて、感情を表出させる訓練をしましょう。ドラマを見て感動する。主人公に感情移入し、悲しくて涙を流す。スポーツの観戦をし、ひいきチーム、選手の活躍に喜びを表す。本を読んで、笑ったり、なるほどと納得したり、やってみようと思ったり。喜怒哀楽を表に出してみてください。

 そして、人とのかかわりを通じて、いろいろ体験することです。同じような体験をしていないと、相手の気持ちはわからないものです。「高齢の両親を介護している。仕事をしていられないので、やめました。いろいろたいへんですよ。」という話を聴きます。仕事を辞めざるを得ないほどたいへんなことはわかります。しかし、そういう介護の経験がないと、本当のたいへんさ、辛さ、心の葛藤、日々ふりかかる問題の数々は、なかなかわかるものではありません。経験してはじめて、あの時話を聴いていたけれど、こんなにもたいへんなことだったのだと気づきます。経験の豊かさが共感性を高めることにつながるのです。

 とは言え、体験できることには限りがあります。人が経験するあらゆることをすべて体験できれば、どのような人にも寄り添うことができるかもしれません。しかし、それは不可能です。ですから、体験できないことは本を読んだり、話を聴いたり、疑似体験で補うのです。

 なにごとも自分のこととしてとらえる。心のガードを解く。喜怒哀楽を表現する。人とのかかわりを通していろいろな経験を積む。疑似体験で経験の足りない点を補う。共感性を磨くための心得を生かしてください。

(3)人の心に触れる内容を

 どんなに上手に話しても、心に響かない内容では共感させられません。人の心に触れる内容を話してください。人と人とのかかわりにおいて、愛情を感じる話。温かい気持ちが伝わる話。話に登場する人物の喜怒哀楽を描けるような内容が必要です。

 そして話を効果的に組み立てることです。どんなに共感できる内容を話しても、わかりやすく、聴きやすくまとまっていなくては、聴き手の心に響かせることはできません。まとまった話はまとめた話、まとめる努力をした話です。

 それから聴かせ続けるため、話の内容と組み立てを工夫してください。具体例で語ること。聴き手の頭の中に絵を描かせるように、より具体的な話を意識してください。心に響かせるためには、内容の変化も必要です。伏線をおいたり、比較したり。クライマックスである山を際立たせるために、谷を設けます。

 参考まで、いくつか短い例をご紹介しましょう。

「卒業式」

 校長先生が卒業生の名前を呼び、一人一人に卒業証書を渡します。Aさんが呼ばれ、卒業証書を受け取ったあと、少し間がありました。式場が一瞬シーンとしました。そして、病気で亡くなった同級生の名前が呼ばれました。すると卒業生全員の「はい!」という力強い声が響きました。しばらくの間、会場は感動に包まれました。

「店主のさりげない思いやり」

 60代の女性Aさんがご主人と散歩中のできごとです。結構歩いたので、ちょうど目に入った公園のベンチで休憩することにしました。正面のお店のソフトクリームののぼりを見つけ、Aさんがソフトクリーム買いに行きました。ご主人はベンチで待っていました。Aさん、2つ買ってベンチに向かいます。両手に一つずつ持って、ご主人の方を向いてにこやかに早歩きです。途中、「あっ」ちょっとした拍子にひとつ落としてしまいました。

 Aさんは、もう一度お店に戻り、「落としてしまったのでもう一つ」と若い店員に300円払いました。ソフトクリームをもらって、戻ろうとしたときに、奥から店の主人が出てきました。「奥さん手を見せてください」 Aさんは、「なんだろう?手相でも見るのかな?」と思いました。手をそっと差し出すと、店の主人はAさんの手をやさしく握り、すぐに引き返して店の奥に入ってしまいました。Aさんが手を開くと、そこには300円がありました。「返してくれた!!」Aさんは驚くとともに、店の主人のさりげなく温かい思いやりに心打たれました。

「バスの運転手の心づかい」

 5歳のY君はお母さんとバスに乗るのが好きです。バスの降車ボタンを押すのを楽しみにしています。ある日のこと。バスに乗ったY君がバスの停車ボタンを押そうとしました。ピンポン。先に押されてしまいました。「あ~あ!」Y君の大きな声。残念そうでした。押してしまった女性も気づいて「ごめんなさい!」でも、Y君の気持ちはおさまりません。今にも泣きだしそうな顔です。

 バスが信号で止まりました。運転手が小声でY君に声をかけました。すると、次停車のランプが消えました。「ボタン押せる!」Y君は嬉しそうにボタンを押しました。運転手のあたたかいこころづかいが乗客を笑顔にさせました。

 いかがですか? 話す時には、話す内容を十分消化し、自分のものにしていなければ、聴き手の心には伝わりません。人の心に触れる内容を選び、相手に伝わるように組み立てを工夫し、気持ちをこめて表現します。

(4)ことばに気持ちをこめよう

 どんなに感動的な内容でも、その内容にふさわしい表現でなければ聴き手の心に届きません。表現が貧弱であったり、単調であったり、具体性がなければ、気持ちを伝えることができません。

 例えば、良い映画を見た。すごく感動した。その気持ちを伝えたいと思っても、「今日、良い映画を見て、すごく感動しました。」これでは、感動が伝わりません。まずは、どのような映画だったのか。感動した場面を具体的にありありと表現してわからせなければなりません。あたかもその場にいるように臨場感を起こさせます。ことばで聴き手の頭の中に絵を描かせます。

 その方法のひとつは、話の中で会話を再現することです。直接話法と言います。例えば、「私が挨拶したらAさんは笑って挨拶を返してくれた。」と表現するよりは、『「Aさん、おはよう!」と声をかけた。するとAさんはにこっとして、「あっ、おはようございます」と挨拶を返してくれた。』いかがですか、臨場感が違いませんか?

 また、擬音語を生かします。擬音語には、鳴き声をことばで表わした擬声語と、物音をことばで表わした擬態語があります。例えば、「犬に追いかけられました。」と言っても、どのように追いかけられたかわかりません。ひとこと加えます。「犬に(かわいらしく)わんわん、わんわん と追いかけられました。」と表現すれば、ほのぼのとした光景を想像するでしょう。一方で。「(力を込めて)う~ツ、ウォン、ウォン、ウォンと追いかけられたんですよ。」と表現すれば、今にも嚙みつかれそうな光景が浮かびませんか?たいへんだったということがわかりますね。

 そして、生き生きと率直に感動を表現することが大切です。気持ちをこめて話す。ことばや話し全体に感情移入するのです。頭の中で、あるいは心で再体験させながら話すようにすると、ことばにその時の感情、すなわち喜怒哀楽を乗せることができます。また、話の内容と気持ちと表情を一致させるようにしましょう。気持ちに声の調子や強弱、抑揚、リズムを合わせます。無表情で単調に話しても聴き手の心には響きません。とはいえ、あまり気持ちを入れすぎて話せなくならないよう気をつけてください。

 話力総合研究所では、毎月話力講座を開講しています。社会人向けの講座ですから、受講生は20代から80代まで、多種多様な方がいらっしゃいます。稀に10代も。以前に15歳の女子中学生が受講したことがありました。講座修了時に講座受講の感想を一人一人に話してもらいます。その中学生の感想が、参加者の目を潤ませました。下向き加減に、か細い声でとつとつと話します。

 「両親に言われて勉強に来ました。皆、大人の人たち。こんなにおおぜい。すごく不安でした。でも。。。みんな。。。やさしくしてくれた。。。これで講座が終わる。皆とお別れ。お別れするのがとっても寂しい。。。」

 何の飾りもない。素直に気持ちを表現したのです。その話に、会場の全員が心を打たれました。

 感動を伝えるためには、全力で。情熱を傾けて。一生懸命が大切です。自分の感情がゆれていなければ、相手を共感させられません。どんなことばをつくすより、本当に伝えよう、わかってもらおうとする気持ちが聴衆の心を動かすのです。

(5)魅力的な人になろう

 話す内容を、話すにふさわしい人が、適切な話し方で、話さなければ十分な効果をあげることができないとお話ししてきました。聴き手の心に響かせたいと思って、共感性のある内容を用意し、たとえ適切に話せたとしても、最終的には話し手にその話をする資格があるかが問われてしまいます。人の心をつかむ話をするには、その内容にふさわしい魅力的な人にならなければなりません。魅力的な人が、ふさわしい内容を、気持ちをこめて話したとき、聴き手の心に伝わるのです。

 「五体不満足」(1998年、講談社)の著者、乙武洋匡(おとたけひろただ、1976- )さん。生まれつき両腕と両足がない障害にも負けず、電動車いすに乗り、活動しています。私は、東京の山手線で、乙武さんが電車に乗り込んでくるところにたまたま居合わせました。お一人でした。障害者としての生活体験をつづったのが「五体不満足」です。2019年現在で600万部を超える大ベストセラーだそうです。三重苦のヘレンケラー(1880-1968)同様、「障害は不便です。しかし、不幸ではありません。」とのことば通り、作家、スポーツライターとして活躍しています。各地で講演活動も精力的に行っているようです。乙武さんが言っています。『講演後の懇親会で、多くの人から「いろいろ活躍なさって、すごいですね」と言われる。うれしいけれど、少し戸惑う。なぜなら、皆それぞれ活躍している。どうも、「障害者なのに」と声なき声が聴こえてしまう。』

 その乙武さん、2007年に小学校の教員免許を取得し、その年の4月から東京都杉並区の小学校で2010年まで任期付教員として子どもたちとかかわりました。この時の様子は、映画「だいじょうぶ3組」(2013年東宝系)として上映されました。

 任期を終える日。学校の終業式に臨んだのち、職員室で片づけです。子供たちとのかかわり。心の触れ合い。夏の合宿で、学校に一泊したこと。お風呂に一緒に入って、子供たちに世話してもらったこと。いろいろと思いだし、涙しました。しばらくして、帰宅しようと校庭に出ると、なんと子供たちが両親と一緒に集まっているではないですか。乙武さんを待っていたではないですか。乙武さんの姿に気づいた子供たちは、乙武さんのまわりにわっと集まりました。みんな泣いています。しばらくの間、無言で、顔を見あわせながら、目と目を合わせながら、別れを惜しんでいました。

 光景が浮かびませんか?心が揺れませんか?それは乙武さんが特別だからですか?そうではないですね。懸命に生きる乙武さんと子供たちとの触れ合いに私たちは涙するのではないでしょうか。

 テレビの対談番組を見ていた時のことです。ゲストはシンガーソングライターの三浦祐太朗さん。私はこの対談番組で、はじめて彼が三浦友和さん、百恵さんの息子さんだと知りました。あの、俳優の三浦友和さん(1952-)、元歌手の山口百恵さん(1959-)です。番組で彼の話にたいへん興味を持ちました。印象に残りました。

 『息子だということを伏せてシンガーソングライターとして活動していた。なかなか売れない時期を乗り越えて、徐々に認められるようになった。はからずも、百恵、友和の息子だと広まってしまった。母、山口百恵の歌のカバーアルバムの話がでた。引き受けるか悩んだ。一人で悩んだ。僕が歌っては百恵のファンに失礼だ。そもそも自分が息子だからということで歌ってよいものか。仕事のことで、母に相談したことはなかった。初めて悩みを打ち明けた。

 「ちょっといいかな。母さんのカバーアルバムの話が来ているんだ。どう思う。」

 しばしの沈黙の後、母が静かに話してくれた。

 「私が生きている間にカバーアルバムを作ってもらえ、それが息子の歌声で聴けるなんて、こんな幸せなことはない。」

 反対されると思った。心に響いた。自分では決められなかったが、覚悟が決まった。よし、「今の世代の人にも、昭和の時代にこんなにいい歌があったと思ってもらえるよう心を込めて歌おう。」と思った。』

 私はたいへん感銘を受けました。有名人の話だからですか? 否。懸命に生きる姿。お互いに相手を思いやる母と息子の温かい気持ち。そうしたことに触れて、心が揺り動かされたのです。

 やさしさ、あたたかさ、人間味、飾らない自分自身の表現。気持ちを素直に伝える。心格力ですね。それこそが。。。あなた自身の魅力が。。。相手の心に届くのです。相手の心を響かせるのです。

 

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