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理事長ブログ「忘己利他」N9

ビジネスコミュニケーション「仕事がはかどる話し方のコツ」
 ◆よりよく生きるためのツール ~ 究極のコミュニケーション能力を磨く ~

改訂第2版

「8.傾聴力を磨け」

話力総合研究所 理事長 

話力総合研究所 理事長

~ 聴く力が仕事の成果を左右する ~

(1)聞いていたけど、聴けていたか?

 コミュニケーションの重要性を否定する人はめったにいないでしょう。しかし、コミュニケーションについて取り上げると、多くの人が話し方に意識がいくようです。「話し下手を解消したい」「話す力、伝える力をつけたい」「話し方を磨きたい」ということです。私どもの話力総合研究所が主催する「話力講座」にも、「聴き下手をなおしたい。」「聴く力をつけたい。」「聴き方を磨きたい。」という目的で受講される方はほとんどいらっしゃらないですね。

 ところで、「読む、書く、話す、聴く」という「見る」を除く日常活動は、話すより聴くことの割合が高いようです。「自己主張の国」といわれる米国の調査でも「読:書:話:聴=16:9:30:45」という結果だそうです。その他にも類似の調査研究が報告されています。どれも「聴く」割合が最も高いのです。つまり、聴く機会が最も多いということです。それにもかかわらず、多くの方が「話し方」を気にしています。「聴き方」はあまり気にしていない。その証拠に、「話し方教室」「話し方セミナー」は全国でたくさん開催されています。しかし、「聴き方教室」はめったにありません。皆さん「きけている」と思っているのですね。

 本当に「きけていますか?」 「聴き方」をテーマとした話力講座では、どなたか(Aさん)の自己紹介の後に、何人かの方に質問します。「Aさんの自己紹介、聴いてくださいましたね? Aさんの出身はどちらでしたか?」「あれっ。え~と。」「Aさんは、お子さんお二人とのことでしたが、下のお子さんはおいくつとおっしゃっていらっしゃいましたか?」「え~。上のお子さんは中学生と言っていたかと。あれっ、下のお子さんも中学生???」こうしたやり取りになることが多いです。皆さん、「聞」いてくださったのです。しかし、「聴」いていたかということです。

 「きく」にはレベルがあるのです。「聞く」英語では「hear」です。聞き流す。聞かされている。聞こえてくる。漠然と聞いているということです。この「聞く」に対して、「聴く」「傾聴」英語では「listen」ですね。これは、耳を傾けて聴く。集中して聴く。意識して聴く。積極的に聴くことです。そしてもうひとつ「訊く」英語では「ask,question」です。「訊く」は「訊ねる」ですね。相手の本音、真意を引き出すように訊ねながら聴くということです。私たちは目的や状況に応じて、この「きく」レベルを使い分ける必要があります。そして、肝心な時は、「聞く」ではなく、「聴く」「傾聴」「訊く」でなければ効果的ではありません。

 「聴く」のは難しいですよ。集中しなければ聴けないです。忙しい時に人の話を聴けますか?余裕がなければ聴けないです。予備知識がなければ意味が解りません。逆に豊富な知識が邪魔をして、「そんなことわかっている」と話を聴けないこともあります。聴こうと意識しなければ聴けないです。興味関心がなければ聴けない。知らない人、嫌いな人の話を聴くか?悩ましいですね。聴けないことばかりです。そもそも訓練を積まなければ、肝心な時ですらなかなか聴けるものではありません。相手の本心が本当にわかったか?難問です。とはいえ、より効果をあげるためにも、少しずつ意識的に聴く、訊く、傾聴する努力をしていきましょう。

(2)聴解の三原則

 前項では「効果的に聴く努力をしていきましょう。」と申しました。しかし、やみくもに努力しても非効率です。また、どのように努力すればよいのか目安が必要ですね。それが、効果的に聴くための「聴解の三原則」です。

 効果的に話すための「表現の三原則」はすでにお話しました。何でしたか? 聴いてもらうためには「感じよく」話す。誤解させないように「正確に」話す。わかってもらうためには「わかりやすく」話す。表現の三原則は「感じよく 正確に わかりやすく」でした。

 一方、聴解の三原則は「感じよく 正確に 反応を示して」です。

① 感じよく

 まずは、「感じよく」態度に気をつけて聴くのです。向かい合って、相手の顔を見て、にこやかに、親しみを込めて「感じよく」聴くことを心がけましょう。あなたの話は興味深いから、あるいは重要だから、「私は真剣に、積極的に聴きますよ。」というメッセージを話し手に送りながら聴くのです。こうすることで、話し手は気持ちよく話をすることができます。こうした気持ちは両者の人間関係に好影響をもたらします。自分が話す側に回ったときによく聴いてもらえるという効果も期待できます。また、話し手に余計なプレッシャーを与えずに、十分に話を引き出すこともできます。それは聴き手にとってたいへん大切なことです。

 「聴き方」をテーマとした話力講座では、2人(Aさん、Bさん)一組で実習をします。向かい合って、どちらかの方(Aさん)に2分間自由に話をしてもらいます。もう一方のBさんには、できるだけ一字一句もらさないように真剣に聴いてくださいとお願いします。そのうえで、腕を組んで、目をつぶって、反応を示さないで「真剣に」聴いてもらいます。さて、結果はどうでしょうか?話をしてくれたAさんに尋ねます。

 「話しやすかったですか?」

 十中八九「話しにくかった」とおっしゃいます。

 もう一つ質問します。

 「2分間短かったですか?」

 「長かった」「話していても面白くないので、早く終えたかった。」

などとおっしゃいます。次に、Bさんに尋ねます。

 「聴けましたか?」8割前後の方が「聴けなかった」と答えます。聴く態度が重要なのです。

② 正確に

 誤解しないように、相手の真意、本音を引き出すように聴きます。相手の表情やしぐさに真意が隠れているかもしれません。ことばだけを聴いて、早合点するのではなく、相手の本音がどこにあるのかを考えながら聴きましょう。また、誤解していないか、確認する習慣をつけると良いですね。

③ 反応を示して

 「あいづち」をうつなど、相手が話しやすいように反応を示して聴きます。常に聴いていることを相手に伝えながら聴くと、相手は話しやすいです。気持ちが乗ります。多くの話を引き出すことができるはずです。「聴き上手は話させ上手」それは、聴き手にとって大きな利益です。

 タイミングよく、上手にあいづちが打てると対話がスムーズに進みます。インタビュー、対談の上手なジャーナリストや芸能人を見ていると、あいづちのうまさが際立っています。あいづちには、主に次のようなものがあります。ぜひ生かしてください。

 いかがですか? 効果的に聴くための聴解の三原則。「感じよく 正確に 反応を示して」聴く意識を持ち続けましょう。

(3)話は全身で聴け!!

 「話は全身で聴け」変なタイトルですね。本来、話はどこで聴きますか? 「耳」!? そうですね。耳で聴きますね。耳で何を聴きますか?「ことば」!? ことばだけ聴けばよいですか? 語調や間に話し手の本音が隠されていることが多いですよ。同じことばでも語尾が上がるか、下がるかで話し手の気持ちがわかります。「さすがですね↓」語尾が下るときは本心です。一方、「さすがですね↑」と語尾が上がるときは、多くの場合、茶化している、からかっているのではありませんか。

 さて、もうおわかりですね。効果的に話を聴くには、耳からの情報だけでは足りません。ですから、「話は全身で聴け!!」です。耳で聴き、目で聴き、口で聴き、手で聴き、足・態度・表情で聴く。そして、頭で聴き、心で聴きます。わかりますか?

① 目で聴く

 相手の視線、表情、しぐさから真意をつかみます。また、相手が話しやすいように、相手の顔を見て、にこやかに優しい視線を投げかけます。

② 口で聴く

 わからない点は質問します。また、相手が話しやすいように、「そうですか」「なるほど」などとあいづちを打ちます。また、「それで。。。」「きっかけは何ですか?」など話を促したり、引き出したりする場合にも、あいづちや質問は有効です。

③ 手で聴く

 要点をメモしながら聴きます。要点は5W3H(なぜ Why,何をWhat,誰がWho,いつWhen,どこでWhere,どのようにHow,どのくらいHow Many,いくらでHow Much)に加え、重要なキーワードなどです。しかし、あくまで相手の真意をつかむことが目的です。メモをとることが目的にならないようにしましょう。また、話を聴く時にペンをくるくる回したり、余計な手の動きは避けるようにします。

④ 足・態度・表情で聴く

 「足で聴く」ということは、話しやすい、聴きやすい距離を確保するということです。あまりにも近すぎると話しにくいです。とはいえ、遠すぎると聴き取りにくくなります。適切な距離は人間関係によっても変わります。

 相手から十分に話を引き出すためにも、話しやすい態度、表情も大切です。

 十分に話してもらい、効果的に聴くことができる距離、態度、表情を心がけましょう。

⑤ 頭で聴く

 話し手の真意は何か?何が言いたいのか?どうしたいのか?どうすればいいのか?前提となる条件はなにか?など頭で考えながら聴きます。

⑥ 心で聴く

 相手の立場、状況を理解し、相手の気持を慮りながら聴くことも大切です。人間は感情の動物です。論理だけでなく、相手の心情に寄り添うよう努力しましょう。

 自分の気持ちや考え、あるいはある事柄をことばで十分に伝えられますか?ことばは有限です。自分の気持ちや考えに一致することばは見つかりにくいですよ。ですから、聴き手の立場のときに、ことばにとらわれすぎないようにしましょう。相手の真意、本音を推し量るためにも、「話は全身で聴く」ように心がけてください。

(4)聴けない原因は何か?

 「聴けない」を意味することばは多いですね。辞書を引いてみました。「聞き飽きる」「聞き誤る」「聞き落とす」「聞きかじる」「聞き苦しい」「聞き過ごす」「聞き捨てる」「聞きそこなう」「聴き違える」「聞きづらい」「聞きどおしい」「聞き流す」「聞きにくい」「聞き逃す」「聞き外す」「聞きひがむ」「聞きまがう」「聞き漏らす」「聞き忘れる」。こんなにありました。

 職場でも日常生活でも、聴けずに問題になることが少なくありません。いつでしたか、ある企業で新規事業を担当する幹部が話してくれました。役員会で、「儲からない仕事はやめるべきだ。」と言われた。新規事業を利益が上がるものにしようと努力しているところでした。すかさず反論したそうです。「最初から利益が上がるわけがない。携帯の事業が最初から儲かっていたか? ネットショッピングの事業が最初から儲かったか?」そうしましたら、「そんなこと知らないよ!」と言われたそうです。「主張はしても、都合が悪くなると耳を閉ざしてしまう。たいへん失礼な話だ!」とその幹部は怒っていました。

 お互いに聴きあえないと、仕事に悪影響を及ぼしますし、人間関係もぎくしゃくします。自身だけでなく、周囲も含め、聴く力を何とか高めていくことが大切です。そもそもなぜ聴けないのか?原因がわかれば対策を講じられます。まずは、聴けない原因について考えてみましょう。

 聴けない原因は、次の4つに分類できます。人間的な原因、心理的な原因、内容的な原因、外在的な原因です。

① 人間的な原因

 聴くことの大切さをわかっていない人は必然的に人の話を聴かないものです。自信過剰な人、仕事ができると思っている人は他人の話を聴かない傾向にありますね。このようにお話ししますと、皆さんは上司の顔を思い浮かべていませんか?話力総合研究所の聴き方をテーマにした講座を受講後に、「上司に受けさせたい」とおっしゃる方、結構いらっしゃいますよ。

 それから、これまでお話ししてきましたように、努力しなければ聴けないです。意識しなければ聴けないです。このことを知らない人、忘れている人は、効果的に聴くことができません。話される事柄がわかっていることだと思ってしまうと、「そんなことわかっている」と途中で口をはさんでしまいかねません。最後まで聴かなければ、わかっていることかどうか?怪しいですよ。

 Aさんの職場で、お客さんから部長に電話がありました。ちょうど、部長は席を外していたので、要件を聴き、メモを机の上に置きました。しばらくして、同じお客さんから再び電話がありました。先ほどの要件の訂正でした。ちょうどその時、部長が戻ってきました。部長は自席のメモを見ています。Aさんは部長の前に出て、「先ほどお客さんから電話がありました。」 部長は、「あ~、わかった。わかった。」 Aさん「。。。」 間違えなく、後で問題になりますね。

 そして、他人の話を聴く時には、相手に対する思いやりの気持ちが大切です。話を聴く時は最後まで聴くことがマナーです。思いやりがなかったり、マナーをわきまえていない場合には聴けないですね。都合の悪い話は拒否したくなります。同じ内容でも、話している人が誰かにより、話が聴けなくなります。

 知らない人の話を素直に聴けますか? 例えば、ある会合で私の隣の席の人がスピーチを行った。戻ってきたところで、私が話し方の講師であることを伏せて、「あなたの話し方は、~と~を改善したほうが良い。」と伝えたとしたらどうですか? 多くの人は「何を失礼な!」と思うでしょう。好意を持っている人から話されれば聴くけれども、嫌いな人、知らない人が同じ話をしてきたら反発したくなるのではないですか。

② 心理的な原因

 話し手との差を感じると素直に聴けなくなることがあります。「あなたは能力が高いからできるでしょうけれど。。。」「なんだ、年下のくせに偉そうに。」「男性は好き勝手ができるけど。。。」などです。話し手と聴き手の能力、年齢、性別、期待していること、話したい(あるいは聴きたい)内容、興味、関心などに差がある場合に聴けなくなる傾向にあります。

 以前に、「集中しなければ聴けない」ということをお話ししました。しかし、集中できる時間は限られます。一般的には15分程度だと言われています。聴くことは重労働ですから、長時間聴いているのは辛いです。疲れてきます。眠くなってきます。また、話す速度より、聴く速度の方が早いですから、聴いている間に他のことを考える余裕ができます。意識がそちらに向き、気づいたときには聴いていなかったということもあります。

 そして、都合が悪くなると聴けません。たばこのマナーや携帯のマナーの話をされるとどうですか?自分がそのマナーを守っていないと、話を聴くより、言い訳したり、反発したくなるのではないですか? あるグループで、2か月に1回程度、懇親会を行っています。いつもは割り勘で支払います。私はお酒が飲めません。飲める人とこうした会合を持ちますと、だいたい割高です。私はこれを「社会勉強代」と納得しているのですが。ある時の懇親会で、仲間の女性が発言しました。「割り勘では不公平です。飲んでいる人は2000円増しにしましょう。」普段は静かに人の話を聴きながら、おいしいお酒を飲んでいる男性が、黙っていません。「飲まない人は食べている。飲む人間は食べないから。割り勘でいい。」しばらく、この議論は続きました。都合が悪くなると、普段黙っている人でも、主張したくなるものです。

③ 内容的な原因

 話される内容がくだらないものであったり、わかりきっている場合。逆に、難しすぎてわからない場合は話を聴けないですね。もちろん、聴き手にとって、興味がなかったり、必要だと思えなかった場合もそうです。

 また、話されたことばを知らないと理解できません。例えば、「気が置けない人」とは、どんな人ですか?文化庁の平成24年の調査では、40%以上の人が、「気配りや遠慮をしなくてはならない人」と答えたようです。これは誤りです。本来の意味は、「気配りや遠慮の必要ない人」です。「情けは人の為ならず」を「情けは人のためにならない」という意味だと誤解している人も少なからずいるようです。「人に情けをかけると、結局自分に返ってきて自分のためになる」という意味ですね。「一姫二太郎」はどうですか? 本来の意味は、「子どもは一人目に女の子の方が育てやすい」ということですね。正しく理解していましたか? 「宵の頃」は何時頃ですか? 相当数の皆さんが「夜更け」や「明け方近く」と言います。実際は「日が暮れて間もない頃」です。夕方出ている金星のことを「宵の明星」といいますね。誤解している人が多いので、天気予報で「宵の頃」ということばを使わなくなりました。「雨模様」はどうですか?本来の意味は「今にも雨が降り出しそうな状態」のことなのですが、「雨が降っている状態」だと理解している人もいて、最近の辞書には両方書かれているものもあるくらいです。

 ことばの意味を知らないと、誤解することになりかねないですね。また、予備知識を持っていないと話の内容を理解できないこともあります。日頃から内容力をつけておかないと、なかなか効果的に聴けないのです。

④ 外在的な原因

 話を聴く環境が障害になって聴けないということもありますね。騒音や不快な温度、湿度。あるいは適切でない照明。人の出入りが気になる会場。有名人が近くにいたり、気になるものが近くに置いてあったりすると、気が散りますね。聴くことに集中できる場づくりが必要です。

 聴けない原因。いかがでしたか? 皆さんは主にどのあたりが問題でしょうか? 自身の聴けない傾向を知り、効果的に聴くための対策につなげてください。

(5)傾聴の心得

 話を聴けない原因を踏まえ、効果的に聴くためにはどうしたらよいか? 次の対策を参考に、目的や相手、話の内容などに応じて対応なさってください。

① 目的を意識

 何のために話を聴くのか。つねに忘れないことです。そうすれば、たとえ話し手が不快なことを言ったとしても、適切でない態度だったとしても、冷静に対応できるはずです。

② メリットを自覚

 話を聴くことは、結局自分の利益になることだという意識を持つことです。そして、せっかくの機会ですから、話し手から十分に話を引き出すようにしましょう。興味を持って、尋ねながら聴く姿勢が大切です。

③ 「聴く」準備をする

 まずは場づくり、雰囲気作りです。話しやすく、聴きやすい環境を作ることです。どのような話を聴くことになるのか、事前に知り、前もって予備知識を得られるとよいですね。理解が早まります。

④ メモを取りながら聴く

 要点をメモしながら聴く習慣をつけましょう。要点は5W3Hですね。8章の(3)「話は全身で聴け」をもう一度ふりかえってください。

⑤ 考えながら聴く

 メモを取りながら聴くのですが、メモに集中しすぎないようにしましょう。本来の目的は「正しく聴き取る」ことです。話の目的は何なのか。本音、真意は何か?何が言いたいのか?どうしたいのか?どうすればよいのか?前提条件は何か?などですね。

 「しょうがくせいになって上京し、それから酒とたばこを覚えました。」などと話されますと、びっくりしませんか?考えながら聴かないと誤解しかねないです。「小学生」ではないですね。「奨学生」です。「20歳を過ぎて、新聞社の奨学生として上京し、働きながら大学に通った。」と話したかったのです。

 レストランで料理を平らげ、テーブルの上に空いたお皿がいっぱいになりました。店員に「お皿持っていって」と頼んだら「何枚ですか?」と尋ねられました。「お皿持ってきて」と聞こえたようです。その場の状況を見て考えれば、こういう誤解はしないはずです。

 「出口は右側です」前提条件がありますね。おそらく、「進行方向に向かって」などが省略されています。

 ある大学の先生から聴きました。テストの採点を終え、学生に返したところ、A君が「採点基準は?」と言ってきた。何度も採点基準を説明したが、いっこうに引き下がらない。ハタと気づき、「すでに成績はつけたから結果は変わらない」と言ったら、がっかりした表情で帰って行った。ことばでは「採点基準」ですが、本音は「成績上げてくれ」だったのかもしれません。

⑥ 質問、確認、復唱、念押し

 ことば通りに受け取って、安易にわかった気にならないほうがよいですね。わからなければ質問する。正しく理解できているかどうか確認する。そのために自分のことばで復唱してみる。確かにその通りかどうか念押しする。こうした意識が大切です。

 ある企業の幹部Xさんの話です。取引先のA社の営業に問い合わせをしました。「御社はB社と取引関係がありますか?」 その営業は、どのような取引があるか丁寧に、しかも詳しく答えてくれたそうです。しかし、肝心なことを訊ねてきませんでした。「なぜそういう問合せをするのか?」尋ねてくれば、A社にとって有益な情報を伝えるのだけれども。。。とXさんはおっしゃっていました。

 相手の話を深く、正しく聴くための手段は、質問、確認、復唱、念押しです。心がけてください。

⑦ 常識をわきまえる 慣習を踏まえる マナーを守る

 「これからお客さんがいらっしゃるので、お茶を用意してください。」

「お茶は温かいものですか?冷たいものですか?」「日本茶ですか?コーヒーですか?」「人数は?」「いつお出ししますか?」「お茶の濃さはどのくらいですか?」「お茶菓子はどうしましょうか?」等々。

 実際にはこんなに極端なことにはならないでしょうが、何でもかんでも質問されても困りますね。話す側も忙しいです。場合によっては、「そんなこと自分で考えろ!」などと余計なことを言われかねません。常識の範囲内で、あるいは職場の慣習を踏まえて。マナーを守って。相手に応じて。ということでしょうか。話を聴く時も、効果をあげるためには対応力がものをいいます。

 聴く力が仕事の成果を左右します。効果的に聴くための対策を実践していきましょう。

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