理事 田村 聡 の「講義力をともに高めよう」1 ~ 新連載 ~

第 1 回 『対話と社会生活 』

 永崎一則先生はこのようにおっしゃっていました。「話力インストラクターは、肝心要の講義ができなければ、他のところで力を発揮できても何もならない」と。それだけ講義を重視し、大切になさっていたのです。この教えは、私の中にずっと生き続けています。研究会、常設講座などで講義を行う場を与えられたら、自分の持てる力を100%発揮できるように努力したいものです。そこで、これから1年間にわたり、講義力をどのように高めればよいのかをご一緒に考えていきましょう。第一講座の項目をひとつひとつ取り上げ、講義する際のポイントを会員の皆さまとともに深めていきます。この連載では常設講座を想定して展開します。

 今回は「対話と社会生活」、第一講座の冒頭にあたる項目です。常設講座の場合、まず担当講師がそれぞれ挨拶を行います。最後に、この項目を担当する講師が挨拶を行い、そのまま講義に入ります。自分が受講生として初めて話力講座に参加した時のことを思い返してみてください。おそらく(程度の差はあれ)緊張していたのではないでしょうか。そこで大切なことは、雰囲気をほぐす工夫です。講師自身がどのような動機で話力の勉強を始めたのか、初めての実習に取り組んでどうだったのかなど、自己紹介を交えて語ることで受講生の心に安心感が生まれます。スピーチでの失敗談なども効果的でしょう。「この先生もそうだったのか」と受講生が思えたら、講師に対する親近感を持ってもらえます。これは、好かれるための条件にある「共通性」「類似性」ですね。そのようにして「相手を聴き手にする」ことが導入部分でのポイントです。

 さて、この項目は抽象的な題だけに講義が難しい反面、どのようにでも講義できるメリットもあります。現代の社会は、人と人が直接ことばを交わさなくてもやりとりができてしまいます。インターネットを使えば買い物ができてしまう、メールやLINEなどで必要なコミュニケーションがとれる、スーパーではセルフレジで精算ができる…挙げればきりがありません。便利になった反面、人の心に及ぼすマイナス面も無視することはできません。セルフレジの導入により、直接店員さんとふれあう機会が減って味気ないという投書も新聞で見たことがあります。コロナ感染拡大により大学でオンライン授業が行われるようになった時、自宅で大学生活を送っていた学生の中には孤独感に苛まれて不安定になった人たちが少なからずいるのです。そして、対面授業が再開されても、人とのコミュニケーションがうまくいかずに、かえってストレスを感じてしまうというケースもあります。社会の変化とともに、さまざまな問題が生み出されているといえるでしょう。このような話材を講義に入れるのも、ひとつの方法です。

 テキストにも書かれているように、人とかかわるということは「話す、聴くことの相互関係」(つまり対話)です。講義のポイントとして、ここはしっかりおさえたいところです。対話によって問題調整を図っていくのですが、その調整が難しいためにさまざまな摩擦が起こります。それがいがみ合いや争いにまで発展することも多々あります。昨今の世界情勢を見れば明らかでしょう。私たちの日常生活を見つめても、具体例を見出だすことは容易です。そのような難しい状況ではあるけれども、やはり人として生きていく上で対話を欠かすことはできません。また、もともと私たちは対話を通して人とふれあうことを求めているのです。そこで「話す・聴くことの全体的な力(=話力)」を高めることが重要です。その点を、この項目の講義では強調します。

 この項目は「2 話力とは何か」と連続して講義することが多いため、あまり長い時間をかけられない難しさがあります。私は7~8分を目安にしています。受講生にとってうなずける話材を盛り込みながら、コンパクトにまとめていけるとよいでしょう。ポイントは①雰囲気をほぐす、②話力を学ぶ動機づけを行う、の2点です。次回は「2 話力とは何か」を考えていきましょう。

 

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