理事長ブログ「忘己利他」N11

ビジネスコミュニケーション「仕事がはかどる話し方のコツ」
 ◆よりよく生きるためのツール ~ 究極のコミュニケーション能力を磨く ~

改訂第2版

「10.気持ちよく人を動かし、好結果につなげる 効果的な指示・依頼」

話力総合研究所 理事長

話力総合研究所 理事長
話力講演 気持ちをこめて

(1)手を抜くな!

 仕事でも日常でも指示、依頼を頻繁にしていますね。ほとんどの場合は依頼ですか? 仕事上、上司から部下には「依頼」、権限を伴う「指示」、そして強い権限を伴う「業務命令」の場合がありますね。うまくいっていますか? 効果的に指示・依頼を行うにはどうすればよいのかと、悩んでいる方もいらっしゃるのではありませんか?

 さて、あらためて指示・依頼の目的は何でしょうか?このことがあいまいでは、効果的に指示・依頼できるわけがありません。「ひとりごと 無視していたら 指示だった」などという川柳がありました。第一生命が毎年公募しているサラリーマン川柳の入選作でした。指示・依頼の目的は、「個人や集団の目的を第三者に果たさせる」ことです。かみ砕いて言いますと、「人に何かをしてもらう」ということでしょうか。相手に伝えて、相手が了解すれば、たいていの場合うまくいくと思ってしまいますよね。ですから、うまくいかなかったときはたいへんです。

 勤めていた頃の失敗談です。社内会議の最中に伝言が入りました。某新聞社の営業部長がいらしたということでした。伝言してくれた後輩に「会議すぐ終わるから、少し待っていてくれるよう伝えて。大事なお客様だから頼むよ。」と依頼しました。会議をすぐに終え、受付に急ぎました。なんと、大事なお客様が立ったまま待っていたではありませんか。背中にすっと冷たいものを感じながら、丁重にお詫びをしました。あれほど大事なお客様だからと言ったのに。「普通、応接室に案内して、お茶を出しておくだろう。なんでこんなあたりまえのことができないんだ。」依頼した側はそう思うでしょう。一方で、受けた側はどうか? 場合によっては、「それならそうとわかるように言ってくれれば、きちんとそのようにしましたよ」と思うかもしれません。こうしたいわゆるコミュニケーションエラーが繰り返されると、徐々に信頼関係が損なわれ、人間関係がぎくしゃくしてきます。相手の評価にも影響します。上司が部下を評価するだけではありません。部下も上司を評価しています。しまいには職場全体がぎくしゃくしてきて、仕事がうまく回らなくなってくるかもしれません。

 そうならないためにも、まずは指示・依頼する側が手を抜かないことです。うまくいかない場合の多くは、どこかで手を抜いているのです。手を抜いておきながら、うまくいかないと相手の所為にしているのでは、いつになっても改善は見込めません。まずは、話し手が適切に指示・依頼することです。私は、「5W3H1Rに手を抜くな」と言っています。

(2)具体的な指示(依頼)のしかた 
5W3H1Rを指示(依頼)せよ

 指示・依頼の効果をあげるためには「5W3H1Rを指示・依頼」するのでしたね。効果をあげるため、失敗しないためには手を抜かないことです。このようにお話ししますと、中には反論してくる方がいます。「事細かに指示すると部下が育たない。部下に考えさせなければ。」というのです。これは、その通りです。しかし、手を抜けば、うまくいかない可能性が高まります。実践の場ではこの応用問題を解かなければならないのです。部下を育てるために意識して手を抜くのであれば、その後のフォローが必要です。しかし、多くの場合、無意識に手を抜き、うまくいかなくて感情的にしかりつけていませんか?これでは部下を育てることにもなりません。

 まずは効果的に指示・依頼するためのポイントをしっかり押さえてください。

① 目的(WHY)を指示する

 何のために行うのかをわからせることが大切です。これがわかれば、応用がききます。
「駅前のケーキ屋でイチゴのショートケーキ買ってきて」
「イチゴのショート売り切れだった」
「何も買ってこなかったの?お客さんが来るから頼んだのに!」
「だったら、そう言ってくれればいいじゃないか」
「まったく。子供お使いじゃあるまいし。」
などと「売りことばに買いことば」にならないようにしましょう。

 また、「麦茶買ってきて」と言われたら、皆さんはどうしますか?たいていの人はコンビニに行って、ペットボトルの麦茶を買ってしまうのではありませんか?もしかしたら、パックでお湯を注ぐ麦茶がほしかったのかもしれません。目的を伝えないと、期待している結果が得られないことになるかもしれないのです。

 そして、目的をわからせると仕事がはかどります。心理学の実験で報告されています。2つのグループに分けて、同じ作業をさせます。一方には、目的と作業のしかたを伝えます。もう一方には作業のしかただけ伝えます。目的を伝えられたグループはイキイキと仕事をし、早く終わるそうです。

② 具体的に指示する(WHAT,HOW)

 何をどのようにするのか。仕事の手順や方法を伝えます。

 「午後の会議で使うから、会議室にPC用意しておいて。」 目的「午後の会議で使う」ということを指示しています。午後、お客さんを案内して会議室に入ると確かにPCはありました。しかし、電源が入っていませんでした。お客さんを待たせて立ち上げなければなりません。気の利く人なら目的を伝えるだけでも問題ないかもしれません。しかし、気の利く人ばかりではありません。相手に応じて、求める結果が得られるように指示・依頼しなくてはだめですね。

 「この資料、会議で使うから見ておいて」何を見るのか。誤字脱字か、内容に過不足がないかなのか。

 電話がかかってきてメモを取らないといけない。
隣の人に「メモ貸して」隣の人は「はいっ」と言って、メモだけ渡す。
ペンがなければ書けません。「メモ貸して」と言ったら、メモとペンを渡すのが常識だと思うかもしれません。しかし、相手によりますね。

 日常でも同じです。子供に「お風呂のお湯見ておいて」と頼んだ。子供は「わかった。」しばらくして、お風呂場に行くと、お風呂のお湯がいっぱいです。「お湯あふれそうじゃない。見ていてといったでしょう」子供は「僕、見ていたよ」

 結果を出すためには、相手に応じて具体的に指示するよう心がけてください。

③ 誰にさせるのかを指示する(WHO)

 誰にさせるのか明確に指名してわからせます。「誰か会議の議事録とっておいて」では、誰も議事録とらないかもしれません。あるいは、意欲的なメンバがそろっていれば、皆で議事録をとってしまうかもしれません。これは無駄ですね。

④ いつまでにするのかを指示する(WHEN)

 時々「いつでもいいからやっておいて」などと依頼していませんか? 1週間くらいしてから、「この間頼んだことやってくれた?」「いえ、まだです。」「なんだ、まだやってないのか!」なんて言っていませんか? 相手は、「いつでも言いといったじゃないか」と思っていますよ。

 「いつでもいいから」というのは指示・依頼をしないのと変わりません。必ず、いつまでにと締切を伝えましょう。たとえ、本当に「いつでもよい」仕事だったとしても、忘れずに行える日時を設定すべきです。

⑤ どこでするのかを指示する(WHERE)

 特に重要な業務、セキュリティレベルの高い業務であれば、作業可能な場所が限定されるはずです。どこで行うか具体的に指示します。

⑥ 予算や数量を指示する(HOW MANY、HOW MUCH)

 指示・依頼内容にもよりますが、必要に応じて予算額や数量を伝えましょう。

⑦ 報告を指示する(REPORT)

 最後に、作業を終えたら必ず報告するように伝えます。相手にもよりますが、終わっても報告しない人もいます。なかなか言ってこないので、どうなっているのかと思い尋ねます。「この間頼んだ仕事どうなっている?」「ああ、あれでしたら終わっています。」「なんだ!終わったのなら言ってこいよ!!」などと語気を強めることになりかねません。

 3通りの報告をするように伝えます。おわかりですか? まずは仕事を終えたら報告せよ。完了報告ですね。それから、比較的長い期間行う仕事であれば、毎日あるいは1週間に1回など期間を区切って中間報告をさせます。そして、もうひとつ。一番大事な指示を忘れないでください。「何か想定外のことが起こったらすぐに知らせてくれ」「何か問題になったらすぐに言いに来てくれ」「困ることがあったら、すぐに相談に来るように」これが大切です。悪い報告はしにくいですから、どうしても遅れがちになります。この遅れは、上司にとっては場合によって致命的です。そうならないためにも、必ず報告を指示することを忘れないでください。

 指示・依頼の具体的方法。いかがですか。好結果を出すための、効果をあげるための原則を押さえ、日々の応用問題を解いてください。

(3)指示(依頼)する際の注意点を意識せよ

 指示・依頼する際の効果的な方法について「5W3H1Rに手を抜くな!」とお話ししました。そのうえで特に職場において指示・依頼する場合、次の点に注意してください。

① 命令系統に配慮する

 以前は「命令系統を守る」としていました。近頃は昭和時代のピラミッド型組織は少なくなり、機動力、即応力のあるフラット型組織が主流です。短時間で意思決定し、行動するための組織ですね。今の時代、時間との勝負です。命令系統を守っていては競合他社に後れを取ってしまうことになるかもしれません。しかし、だからといって本来の職制を無視してしまっては、人間関係がぎくしゃくし、その後の仕事がしづらくなります。そこで、「命令系統に配慮する」です。部長が担当者のA君に直接指示を出した場合、その後できるだけはやくA君の直接の上司に「A君に~の件、依頼しているからフォローよろしく」などと伝えておくとよいでしょう。上司も「部長が私に対して気を使ってくれている」と気持ちが良いものです。とはいえ、職場では必ずそうなるとは限りません。A君は、上司から「俺は聴いてないぞ」と言われないように、気を配る必要があります。「部長から~について頼まれました」と一言報告しておくとよいですね。

② 復唱させる

 指示・依頼した事柄を相手が理解したかどうか確認します。しかし、「わかったか?」「わかりました。」では、何もわかりません。相手がどの程度理解したか、相手のことばで言わせてみることが大切です。しかし、とりわけ年上の部下に対して「復唱しろ」とは言えないですね。こういう場合、表現に工夫が必要です。「どのような手順で行うか教えてもらえますか?」などとし、その答えを確認すれば、指示・依頼を正しく理解しているかどうか把握することができるはずです。

③ やる気を失わせないようにする

 職場に戻って急いで資料を作らなければならない。誰かに手伝ってもらおう。そう思って、職場に戻ってみると、新人のA君しかいません。「なんだ、A君しかいないのか!」A君の前でことばを発します。「まいったなぁ~。まあ、しかたないか。ちょっと手伝ってくれ」これはいかがですか? A君、やる気が出ますか? 気持ちはわかりますが、どうせ手伝わせるなら、ぐっとこらえてやる気の出るように伝えないといけませんね。「A君がいてくれたか! ちょっと難しいかもしれないが、教えるから手伝ってくれ!」これならどうですか?まあ、やる気がなくなることはないですね。相手の自尊心を守った表現を心がけてください。

 私は若い頃、大手のソフトウェア開発会社に勤めていました。コンピュータシステムを開発しますと、その操作説明書を作ります。何人かの部下に手分けして原稿を書かせようとしました。「~。以上の分担で頼むよ。来週までに原稿出してくれ。まあ、こんな説明書作っても、分厚くて誰も読まないのだけれど。。。」余計なことを言ってしまいました。普段は読まないでしょうから、事実なのですが。こんなこと言われてやる気になりますか? やる気が出るような表現を工夫しなくてはいけませんね。「システムに何か問題が起きたときには、この説明書が頼りになるのだから、しっかり頼むよ」などとすればいいですね。指示・依頼した事柄の重要性をわからせるようにします。

 いかがですか? 具体的な方法、注意点を守り、効果的な指示・依頼を心がけてください。

(4)一味違う指示(依頼)の受け方

 仕事の能率を上げ、結果を出すには、指示・依頼を受ける側の努力も欠かせません。指示・依頼を受ける際は次の点に気をつけてください。

① ハキハキ

 呼ばれたら返事をします。相手に聴こえるように。切れの良い返事「ハイ!」が好印象につながります。受け答えもハキハキとした方が、相手に対して感じが良いですね。

② キビキビ

 「ハキハキ」した返事、受け答えに加え、きびきびした動作が感じ良いですね。そして相手にやる気を印象づけることができます。いやいや、だらだら行って、相手を不快にしないよう心がけましょう。無意識のうちに相手に不快を与えていないか時々顧みることも大切です。

③ メモ持って

 メモを持つということは、指示・依頼内容を「正しく把握するぞ!」という意思表示です。やる気を示すことです。ぜひ、習慣にしてください。

④ 要点をメモしながら最後まで傾聴

 メモを持つとメモを取ることに集中してしまうことがあります。特にまじめな人にこの傾向があるかもしれません。本来の目的は、指示・依頼の内容を正確に把握することです。要点をメモしながら、よく考えて話を聴くようにしましょう。要点は5W3Hです。

 また、途中で質問をすると、相手は話しづらくなります。できれば、最後まで相手の話を聴くようにしてください。疑問点はメモしておいて、相手の話の後に確認していきます。

⑤ 質問、確認、復唱

 指示・依頼内容に5W3Hが含まれるか。足りない点は質問して補います。そして、誤解がないか、内容を自分のことばで復唱し、正しく理解しているか必ず確認しましょう。また、予定外の事態が生じた場合の対応なども可能な範囲で確認しておくとよいですね。

⑥ 安請け合いしない

 相手は引き受けてくれたからには、目的を果たしてくれる、期待通り行ってくれると思っています。「うまくいかないだろう」などとは、まず思わないですね。ですから、必ず期限内に成果をあげなければなりません。安請け合いは禁物です。締め切りぎりぎりになって、「やっぱりできませんでした。」では、どうしようもありません。期限と重要度による仕事の優先度にしたがって、引き受けられるかをよく考えましょう。

図. 仕事の優先順位

 

 

 

 

 

 

 図のように、期限が早く重要度の高い仕事(①)が最優先です。次は、期限が早く重要度の低い仕事(②)を片づけます。重要度が高い仕事(③)をどうしても意識しがちです。しかし、期限まで余裕があるのであれば、②の仕事をこなしていかないとたまってしまいます。仕事をためてしまう人は、この傾向があるかもしれません。②の仕事がたまってしまうと、③にも影響が出ますので、注意してください。

 いろいろ事情があって、引き受けられそうにない場合、「できません!」「やれません!」は相手を不快にします。職場であれば、上司に現状を知ってもらえるチャンスです。「今、~と~に取り組んでいます。ですから、期限内に引き受けるのは難しいのですが。」などと相談してみるとよいですね。そうすれば、相手は「それじゃあ、期限をこうすればどうか?」ですとか、「~は後回しでよいから」などと代案が示されるでしょう。

⑦ 報告を忘れるな

 たとえ、報告を指示されていなくても、指示・依頼された事柄を終えたら、必ず報告する習慣をつけましょう。こうした小さな努力が信頼関係を深めることにつながります。職場では評価されるでしょう。また、何か問題が生じたら、すぐに報告することも忘れないでください。情報収集に時間がかかる場合もあるかもしれません。その場合は、第一報として、「今、~という連絡がありました。事実関係を確認中です。問題が生じるかもしれません。情報を得たらすぐに報告します。」などと事前に伝えておくことが肝要です。

 

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