理事長ブログ「忘己利他」N18

ビジネスコミュニケーション「仕事がはかどる話し方のコツ」
 ◆よりよく生きるためのツール ~ 究極のコミュニケーション能力を磨く ~

改訂第2版 「17.話の構成法」

話力総合研究所 理事長

話力総合研究所 理事長
行政職員 係長研修

(1)まとまった話は「まとめた!」話

 おおぜいの前で話すことになり、うまくいかなかった経験がありますか? 途中からことばが出なくなってしまった。俗に「頭の中が真っ白になった」などと言いますね。同じ話を繰り返してしまった。話が脱線し、元に戻せなかった。話を終えられなくなってしまった。気づいている皆さんは救いがあります。こうした失敗体験を「話し方」の問題だと多くの人が誤解しています。しかし、たいていは話の組み立て方、「話の構成」に問題があるのです。

 「まとまった話はまとめた話」「まとめる努力をした話」です。思いつくままに話したら、まとまるはずがありません。まとめる努力をすることです。それでは、いつまとめますか?

 まずは、話す前にまとめますね。話す内容を整理し、あらすじ原稿を作っておきましょう。第2次世界大戦中に英国の首相を務めたチャーチル(1874-1965)は名演説家として知られています。チャーチルの息子のことばです。「父は人生の大半を原稿書きに費やした。」 名演説家でもそれほど準備をする。いや、それほど準備をしたから名演説家と言われるようになったのです。準備が大切です。

 それから、話しながらもまとめます。話している最中に予定外のことばを発してしまうことがあります。脱線しても、できるだけ早く本筋に戻す意識と努力が求められます。

 そして、話の終わりにまとめる。話を締めます。聴き手の印象に残すようにします。全体の内容を要約したり、もっとも言いたいことを手短に伝えます。印象に残るキーワードを用意しても良いでしょう。どうしても見つからなければ、「いろいろお話ししましたが、~について話しました。熱心にお聴きくださり、ありがとうございました。」などとすれば、話が締まります。

 さて、もうひとつ。話した後にまとめる。話し終えて、反省しますね。あ~すればよかった。こ~すればよかった。そのままにしていると忘れます。反省を踏まえて、忘れないうちにあらすじを修正しておくと次につながります。「スピーチ上達法は話した後にまとめる」です。実践なさってください。

 ところで、「まとめる」とはどういうことでしょうか? まとめるとは「聴き手が聴きやすく、わかりやすいように、聴き手に対応して順序だて、整理した話」です。聴き手が話の効果の決定権を持っているのですから、聴き手に対応して順序だてる必要があります。「聴き手の心の法則に従って」順序だてて話せば、聴き手にとっては聴きやすく、わかりやすい話になりますね。ある有名な料理人が仲間の料理を評して「自分の技を見せようという心が強すぎて、客の心を忘れている」と言ったそうですが、話にもあてはまります。「自分の話を聴かせようという心が強すぎて、聴き手の心を忘れている」

 このようにことばでいうのはたやすいですが、はたして「聴き手の心の法則」を理解するのは困難を極めます。まずは、原則を守って話を整理してみましょう。

(2)あらすじ原稿をつくるための準備

 「まとまった話はまとめた話。まとめる努力をした話」でしたね。あらたまった場で話す場合は、準備が大切です。原稿を作成して、練習を十分に行いましょう。しかし、自己流では効果的ではありません。いったいどうやって話をまとめればよいのか?効果をあげるための原則を踏まえ、自身が取り組みやすい工夫をするとよいですね。そこで、まずは次のように取り組んでみてください。

① 目的を明らかにする
 何のために話すのか?その意識をしっかり持つことが大切です。短い文で書き留めておきましょう。

② 立場・役割を意識する
 特にあらたまった場では、何でもかんでも話してよいわけではありません。立場をわきまえないと、聴き手から思わぬ反発を招いたり、不評をかうことになるかもしれません。また、求められた役割、期待されている役割を果たす必要があります。司会なのか、開会・閉会のあいさつなのか、主催者を代表しているのか、来賓としてなのか。

 原稿を作成したら、読み直して、立場・役割にあった内容かを必ず確認してください。開会のあいさつが主催者代表のようなあいさつになっていては、その後の主催者あいさつがしにくくなります。主催者なのに、来賓のようなあいさつでも聴衆に違和感を与えますね。

 立場や役割に適した話ができれば、周囲からの評価が上がりますし、人間関係・信頼関係もよりよくなるでしょう。その後も頼りにされますよ。

③ 時間を意識する
 慣れた人ほど話が長くなります。まとまらない話ほど長くなります。「話の効果は話される時間に反比例する」と言われます。内容があって、わかりやすく、短い話ほど印象に残ります。また、時間オーバは聴衆を退屈させかねません。主催者に迷惑をかけます。他の話し手や聴き手の貴重な時間を奪うことにつながります。

 若いころのことです。会合でスピーチを頼まれて、一生懸命準備して臨みました。しかし、主催者が50分近くあいさつしたため、運営担当が大あわて。申し訳なさそうな顔をして私のところに近づいてきました。「もうしわけない。時間がなくなってしまいました。。。」後半はことばになっていませんでした。緊張に耐えながら、自分の時間を待っていましたので、ほっとしたのも事実です。しかし、「せっかく一生懸命準備してきたのに」という残念な思いもありました。

 与えられた時間内にまとめることです。そのために、話せる時間を知ること。時間が指定されているときは、その時間の8割から9割で話を終えられるように準備すること。指定されていなければ、「ひとことあいさつ」は2分。主催者、主賓のあいさつは3分程度と考えましょう。そして、自身の話す速度と時間との関係をつかんでおくこと。1分間に何文字程度話せるかです。一般には270文字前後。格調高い話、弔辞などでは、200文字から250文字程度を目安にしてください。普通に話しているところをビデオにとって、話の内容を全文原稿におこし、文字数をカウントしてみるとよいでしょう。何分の話で、何文字話せたかがわかります。割り算すれば、1分間にどのくらい話せるかがわかりますので、準備するときの参考になります。

④ 聴衆を意識する
 「話の効果は聴き手が決める」のでしたね。また、まとめるということは、「聴き手が聴きやすく、わかりやすいように順序だて、整理すること」でした。ですから、話を聴く相手、すなわち聴き手がどのような人なのかをつかむことが大切です。準備の段階でできることなら取材します。また、その場で話の冒頭に確認します。話している間も、聴き手の表情やしぐさから特徴をつかみ対応していきます。聴き手に語りかけ反応を見ても良いでしょう。あるいは実際に質問して確認することも大切です。聴き手を知る方法「聴衆分析」については、後で詳しくお話ししますので、参考になさってください。

⑤ タイトル・演題を決める
 タイトルは決められている場合もあれば、自ら決めることもあるでしょう。ちょっとしたあいさつであれば、タイトルなしということもありますね。話の内容に沿っていて、聴き手に興味を持たせることができるタイトルを工夫しましょう。そして、話の準備ができた後、タイトルは適切か再度振り返ってみるとよいですね。

⑥ もっとも言いたいこと(中心思想、テーマ)を明らかにする
 何を言いたいのか話し手自身、はっきりしないと、話がまとまりません。まずは、何を伝えるのかを明確にします。この時、あれもこれもにならないようにしましょう。知識が豊富で、いろいろ内容を持っている方は特に注意してください。「一時に一事の原則」です。時間にもよりますが、いろいろ話したいところをぐっとこらえて一つに絞る。「今回はこのことで勝負」と覚悟を決めることです。いろいろ話しても、聴き手はすべてを消化できません。自己満足になるだけです。効果を考えるならひとつに絞ったほうが良いのです。

 もっとも言いたいことは、一文で書き留めておきましょう。徹底的に枝葉を切り落としたぎりぎりの要点です。「中心思想」です。自分の最も伝えたいことですから、切り落としすぎて中心思想がなくならないように注意してください。

 例えば、「私の仕事」というタイトルで話すとします。テーマは「好きで始めた仕事だから40年間継続できた。」などとします。この時、「生産性を2倍に高める方法」では、テーマになりません。タイトルとしてはよいですが、「生産性を高める方法」が何なのか、話し手がもっとも言いたいことを表していません。

 「職場の活性化」というタイトルでしたら、テーマは「生き生きとした職場はよい人間関係により築かれる。」あるいは「良い人間関係を築くには感じの良いあいさつが大切だ。」など、一文、読点「、」と句点「。」で完結する文で表わす努力をなさってください。

⑦ 柱を立てる
 テーマをわからせるのにどういう角度から話すと効果的かを検討します。話の筋を決めることです。これを「柱を立てる」と言います。

 「あいさつが大切」というテーマで話すとします。新入社員に話すのでしたら、「あいさつしないと、周囲の人たちと良好な関係を築けない」あるいは「あいさつしないと面倒見てもらえない、支援してもらえない。」といった角度から話せばよいですね。しかし、中堅以上、管理職などにこのように話しても、おそらく納得してもらえないでしょう。この場合、「あいさつしないと、情報があがってこない」「あいさつしないと職場がぎくしゃくする」といった角度から話をすればわかってもらえますね。

(3)項目列挙式の原稿作成法

 これまで、あらすじ原稿を作る準備をしました。目的、役割、時間、聴衆を踏まえ、自分がもっとも言いたいことを明確にしておくのでしたね。そして話の中心となる話の筋、すなわち柱を立てておきます。この柱に話の材料、「話材」を串刺しにしていくのです。具体的には次のようにします。

① 話全体をイメージし、項目をあげる
 テーマ、柱が決まったら、話す内容全体を頭の中でイメージしてみます。多くの人がこの段階で思いつくまま話すので、まとまらない話になるのです。イメージしたら、忘れないように主な内容やキーワードを手短かにかき出していきます。項目をあげていきます。すべて書き留めたら、少しそのままにしておきます。「ねかせる」といいます。あとで冷静に振り返るのですね。半日から2,3日ねかせておくとよいと思います。

② 項目を整理する
 少し寝かせた項目について整理していきます。同じような内容をまとめます。テーマに関係ないこと、関係が薄い内容を削除します。時間の関係で話せそうにない内容もぐっとこらえて削除するとよいでしょう。また、足りない項目をつけたします。こうして、話す時間1分間に対して、概ね1から3項目程度にするとよいですね。

③ 話す順序(配列)を工夫する
 用意した項目を話す順序に並べます。聴き手にとって、聴きやすく、わかりやすい順序を意識します。聴かせ続ける、退屈させないよう気を配ります。話の終わりには印象に残すなどの工夫も必要です。

 話の配列にはいくつかの方法がありますが、慣れるまでは3段階法(切り出し、展開、結び)で並べるとよいでしょう。

(4)話す順序は3段階法で

 聴き手にとって聴きやすく、わかりやすい順序で話すには、話す順序、話の配列を工夫しなければなりません。慣れるまでは3段階法(切り出し、展開、結び)でまとめると効果的です。次のようにします。

① 切り出し
 聴衆をひきつける工夫が必要です。話せる時間にもよりますが、次のような項目をおくとよいでしょう。

 あいさつ。自己紹介(短時間の話であれば「名のる」)。時間があれば、聴き手をひきつける話題(ちまたで話題になっていること、ニュース、天気、ことわざ、その場で起こったこと、主催者や主賓に関わることなど)を用意します。

 そして、何について話すのかを予告します。

② 展開
 テーマをわからせる努力をします。わかりやすく、論理的かつ具体的に話します。納得させたり、共感させられる話を工夫します。

 話が平坦では印象に残りません。飽きて眠くなってしまうかもしれません。せっかく大事なことなのに、あるいは、たいへん苦労したことなのに、すごく感動したのに、そのことが十分伝わらないかもしれません。

 例えば、「私は難しい国家試験に合格した。」と話されたらどうでしょうか? ことばとしてはわかります。わかりますが、心に響いてきません。どんなに難しかったのか、どんなに苦労して合格したのかを感じることができません。「難しい試験に合格した」という「山」、クライマックスですね。これを際立たせるためには、「谷」を設ける工夫が必要です。「谷」が深ければ深いほど印象に残ります。「山」の高さが際立ちます。次のように工夫したらどうでしょう?「最難関の国家資格をめざした。合格したいと思った。しかし、何度受験してもだめだった。毎年不合格、不合格、不合格だった。心が折れそうだった。しかし、自分で決めたんだ。必ず受かるんだと言い聞かせ。必死で努力した。本当に必死だった。すごい形相で勉強した。そのかいあってか、この春の合格発表で、受験番号があった。こうして私は難しい国家試験に合格した。」

 いかがですか? 昔NHKで放映された「プロジェクトX」という番組は、世の中に役立っている成功した仕事(プロジェクト)について、このような構成をとっていましたね。番組の前半から中盤までは失敗に次ぐ失敗。そして後半に何かのアイデアを得て、努力する。その結果、成功する。

 話も同様で、聴かせ続けるには内容の変化が大切です。「山」を際立たせるために「谷」を描く工夫がその一つです。

 「山」と「谷」の他、具体的な話と抽象的な話をうまく取り入れてメリハリを出すという方法も有効です。例えば、「最近は公共の場でのマナーの悪さが目立ちます」などと抽象的に広くとらえます。そのうえで、電車内のマナー、病院でのマナー、レストランでのマナーなど具体例を話します。あるいは、逆に具体例を話して、そのまとめとして「このように最近は公共の場でのマナーの悪さが目立ちます」としてもよいでしょう。

 また、わからせるためには、何かと比較して語ると効果的です。「すごく広い庭園」と言っても、聴く側はピンときません。印象的ではありません。納得感がありません。例えば、「ディズニーランドと同じくらいの広さの庭園」「東京ドームの5倍の広さがある庭園」のように聴き手が知っている事柄と対比させて語ります。「すごく広い」よりは広さがわかりますし、印象に残るのではないですか?

 「釣り名人と一緒に釣りに出かけた。釣り名人は3匹も魚を釣った。さすがだ!」聴き手には納得感がないですね。「釣り名人なのに、3匹しか釣れなかったのか?」と思いませんか?少し工夫するとまったく違う印象になりますよ。「釣り名人と一緒に釣りに出かけた。我々は一匹も釣れなかったが、さすが釣り名人、三匹も釣った。」こうすると納得できますね。印象にも残るでしょう。もちろんそれが事実でなければなりませんが。

 聴かせ続ける構成と工夫。「比較する」ぜひ、工夫なさって効果をあげてください。

 最後にもう一つ、効果をあげる方法として「伏線をおく」ようにします。

 例えば、「取引先のAさんに話をしたら、わかってくれた。うれしかった。」まあ、わかりますが、これだけではあまり印象に残りませんね。どれほどうれしかったかが、わかるように伏線を設けます。話の前半の内容を工夫します。「取引先に話をしなければいけない問題だ。わかってくれるだろうか?しかも、先方のAさんとは面識がない。たいへんな事態になったらどうしよう。不安だった。しかし、勇気を出して話そうと思った。~。Aさんに話をする機会が巡ってきた。一生懸命話した。Aさんはわかってくれた。うれしかった。」こちらのほうが、わかりますよね。

③ 結び
 話を締めくくります。「熱心にお聴きくださいまして、ありがとうございました。」などと感謝のことばで締めくくります。あるいは、願望を伝えたり、協力を求めたり、何かを訴えて締めくくるのも良いでしょう。話全体を要約する方法もあります。

 「皆さんはどうお考えでしょうか。。。」などと余韻を残したり、印象に残る短いことばで締めくくるのも効果的です。

 こうした結びの内容を準備しておくことが大切です。切り出しと結びがしっかりしていれば、話は締まります。準備した結びのことばを忘れてしまった、どう結んでいいかわからなくなった。このような場合には、「タイトルに戻る」と覚えておいてください。「いろいろと話しましたが、今日は~(タイトル)~について話しました。熱心にお聴きくださり、ありがとうございました。」いかがですか?話が締まりますね。

(5)一に練習、二に練習

 これまで準備した内容をあらすじ原稿として書いておきます。次の図のようにまとめるとよいですね。

あらすじ原稿

図. あらすじ原稿の例

 原稿ができたからといって安心しないでください。本番で成功するためにはこれからが大切です。そうですね。徹底的に練習します。

 必ず練習をして臨んでください。練習は声に出して行いましょう。どなたかに聴いてもらえるようなら、聴いてもらいましょう。聴き手としての印象を聴くことができれば、効果的に改善しやすくなります。どうしてもうまくいかない箇所があれば、内容や表現を見直したほうが良いです。練習中に全文原稿を書いても良いでしょう。しかし、本番には、項目を書き留めた、あらすじ原稿で臨んだほうが良いです。本番のあらすじ原稿は、普段読める文字の2~3倍の大きさで書いておくことをお勧めします。緊張しますと文字が見にくいです。大きめの文字にしておいた方が無難です。できるだけあらすじをしっかり頭に入れて臨んでください。緊張してもあらすじを忘れないくらい、練習しておけば、本番は何とかなるものです。

 成功を祈っています。

 

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