理事長ブログ「忘己利他」N21

ビジネスコミュニケーション「仕事がはかどる話し方のコツ」
 ◆よりよく生きるためのツール ~ 究極のコミュニケーション能力を磨く ~

改訂第2版 

話力総合研究所 理事長

話力総合研究所 理事長
感謝の集い

「20.効果的なスピーチ 
    ~ ベストスピーカへの道 ~ 

(1)テーブルスピーチはムードスピーチ

 おおぜいの前でする話の中で、もっともその機会が多いのはテーブルスピーチでしょうか? テーブルスピーチとは、会合の席上などで「ひとことあいさつを」などと指名などされてする話です。「など」が3か所にありますね。テーブルスピーチは会合だけとは限りません。必ず「ひとことあいさつ」とも限りません。直接には指名されず、席の順番、名簿の順番に行うこともあります。

 スピーチを頼まれたら、どうしますか? 逃げたいですか? 断りますか? 昭和の時代なら、それなりの立場の方がスピーチしたのでしょうが、現代は皆します。逃げられないですね。そして、多くの人がそれなりに上手にこなします。しどろもどろになって恥をかくわけにはいきません。気の毒ですね。相当緊張しますね。

 ちょっと待って下さい。会場に集まっている皆さんはスピーチを聴きに集まってきたのですか? 違いますね。ここがポイントです。テーブルスピーチの目的は何か?それは、会合の目的を確認しあうこと。会場に集まった皆さんとの関係を深めるきっかけにすること。会場の雰囲気を高めることです。会場の「ムードを高める」のですから、テーブルスピーチは俗に「ムードスピーチ」と呼ばれています。

 要はひとことでも会場のムードを高められれば成功です。目的は上手に話すことではなく、ムードを高めることです。時に、スピーチに慣れている人の中に、このことを忘れている人がいます。会合に無関係のことを話したり、長々と話したりする傾向にあるようです。結婚披露宴に呼ばれた政治家が、新郎新婦への祝いのことばもそこそこに、政治情勢や自身の政治活動について話す場に何度も居合わせました。あるいは、自分の経歴や成功談を滔々と語る人。軽妙なダジャレや暴露話で一人盛り上がっている人。問題ですね。一人や特定のグループで盛りあがるのではなく、会合の目的に沿って全体の雰囲気が高まるような話をするように心がけます。

 平成13年(2001年)のプロ野球。セリーグの優勝はヤクルトスワローズでした。当時の監督は若松勉さん(1947年~)。優勝を決めた際の監督インタビュー。この種の優勝監督インタビューでは、最後に定番の問いが発せられます。「では監督、最後にファンの皆さんにひとことお願いします」 定番の答えは「ファンの皆さん、応援ありがとうございました。」です。しかし、若松監督はここでことばにつまりました。ベンチでは選手、コーチが心配そうです。少し間をおいて、「ファンの皆さん、おめでとうございました!」球場全体が、一瞬静かになりました。それから「うぉ~」。ベンチでも皆大騒ぎ。おそらく、若松さんは失敗したと思ったことでしょう。しかし、球場全体が最高潮です。若松さん、このひとことで球場を一つにしてしまいました。大成功のスピーチ(この場合はインタビュー)でした。

 テーブルスピーチはムードスピーチです。短いことばで会場全体のムードを高める工夫を心がけてください。

(2)良い話題を選べ

 テーブルスピーチはムードスピーチだとお話ししました。会場全体のムードを高める話を工夫してくださいと申しました。では、どういう話題を選べばよいでしょうか?独りよがりにならず、多くの聴衆に好意的に受け止めてもらうためには、明るい話題であること、独創的な話題であること、場にあった話題であることを心がけてください。

① 明るい話題

 場にあった明るい話題、聴き手にとって楽しい話題が基本です。暗い話、辛い話、不吉な話は避けましょう。雰囲気を盛り上げるどころか、雰囲気を壊してしまいかねません。また、たとえ葬儀の場のスピーチであっても、あまりにも暗い話は聴き手の負担になり、不快につながります。話の内容に救いがあるように心がけてください。

② 独創的な話題

 「二番煎じ」は避けたほうが良いでしょう。スピーチの本などに載っている事例をそのまま暗記して準備したとします。前の人に話されたら、同じ話をするわけにはいかないでしょう。そうでなくとも、聴き手に「あ~、またあの話か!」と思われては効果的ではありません。

 結婚披露宴を盛大に行う傾向にあった昭和時代は、祝辞に「3つの袋」がかなりの頻度で話されていました。結婚生活を送る上での教訓を新郎新婦に送るのですね。披露宴に出席するとよく聴きました。「3つの袋、お袋・給料袋・堪忍袋を大切に」親を大切に。お金を大切に。夫婦円満は忍耐から。ということでしょうか。3つの袋に、胃袋(健康)などを加えて独自性を出す話し手もいました。しかし、どのように工夫しても二番煎じの印象をぬぐえません。できるだけ、自分だけが知っているオリジナルの新鮮な話が効果的です。

 そのためには、取材をすることです。主賓や主催者への事前インタビュー、会合に関係する事柄を前もって調べておきましょう。聴き手に興味を持たせる、聴き手をひきつける内容を仕入れる努力をしてください。

 20年以上前のことですが、すでに10年近く話し方の勉強をし、訓練を積んでいました。それゆえか、結婚披露宴でのスピーチを頻繁に依頼されました。私は当時、依頼されたときの相手とのやり取りを会場で紹介しました。

 『 ~ 新郎のFさんから電話をもらいました。5年ぶりでした。同じ職場ではきつい仕事を一緒にがんばった同志でした。「やあ、しばらく。元気だった。」「ええ、おかげさまで。実は、結婚することになりました。ぜひ、披露宴に出席していただきたいのですが。」と言うのです。「そうか、おめでとう。よく忘れないで連絡くれたね。ありがとう」と言いました。そうしたら、「忘れないですよ。お世話になったこと。これからもずっと一生。」と彼が言ってくれました。私はとてもうれしかった。忙しく辛い仕事の中で、良い関係が作れてよかったと思いました。厳しいことを言ったと思います。それでも私を理解し、受け止め、忘れずにいてくれたFさんに心の底から感謝しました。幸せになってください。本日はおめでとうございます。』

 自分だけが知っていて、相手の人柄を手短に紹介しています。本人たちからも、参加者からも好評でした。

③ 場にあった話題

 効果的なテーブルスピーチのポイントは、場にあった話をするということです。話したいことを話すのでなく、場にあった話をする心がけが大切です。

 あらたまった場ですから、品位を保つこと。会合にふさわしい話に集中し、関係のない話をしないこと。主役や主賓に関する話をすること。そして、次のような話にならないよう注意してください。

・自慢話

・不吉な話

・誰かを非難・攻撃する話、議論になりそうな話

・他人がいいわけを必要とする話

・不平不満、愚痴、悪口、泣き言

・興味本位のうわさ話

・その他、聴衆が不愉快になる話題

(3)スピーチの極意「短く!」

 テーブルスピーチは、講演、講義やプレゼンテーションなどと異なり、自分が主役ではありません。それにもかかわらずなのでしょうか。場をわきまえていないのでしょうか。特に慣れている人に長々と話す傾向があるようです。なかには話が長いことが知られていて、「短くお願いします」と言われているのに、長々話している人を見かけませんか?まとめる力がないのか? 多くの人が話せるようにとの気配りにかけているのか? 自己顕示欲が強すぎるのか? とにかく、司会者や主催者を困らせ、聴衆をしらけさせることになりかねません。そのことを自覚しましょう。

 テーブルスピーチはムードスピーチでしたね。ひとことでムードを高めることができれば成功です。また、話の効果は話された時間に反比例します。長々と話すのはひとりよがりにすぎません。効果の決定権を持っている聴き手が飽きないうちに切り上げるほうが賢明です。

 ある結婚披露パーティーでのことです。新郎の恩師がスピーチしました。「本日はおめでとうございます。私は、新郎が高校性の時、担任でした。」そして、新郎新婦に温かいまなざしを向け沈黙しました。「おめでとう。。。お似合いだなぁ。。。幸せにな。。。がんばれ!!」周囲に深々とお辞儀をして、自分の席に戻りました。温かい、たいへん気持ちのこもったひとことでした。新郎の目も、先生の目もうるんでいました。そして、皆の目も。気持ちが伝わってきました。一番大きな、一番長い拍手でした。

 スピーチの際の効果的な話し方で最も心がけてほしいのは、「短く」です。まずは、話の物理的時間を短くすることです。ひとことあいさつは2分以内。お祝いのことば、できれば2分以内。長くても3分以内です。祝辞は「縮辞」と心得ましょう。1分間に話せる文字数は250文字前後です。これを参考に、慣れている人は、短くする強い意識を持つこと。不慣れであがってしまう人は、効果的なひとことを工夫すること。準備の段階で長い文章を書くのは効果的ではありません。慣れるまでは、あがってしまうことを予見して準備をするようにしましょう。ひとことに気持ちをこめるようにすることです。

 また、聴き手の心理的な時間を短く感じさせる工夫をするとよいですね。たとえ、物理的に長くても、具体的で、印象的、興味深い話は聴き手をひきつけ、時間を忘れさせます。できるだけ具体的な話をすること。聴き手が興味を持てる内容を話すこと。聴かせ続ける工夫と努力が大切ですね。

 いかがですか?話を短くするのは簡単ではありません。十分な準備が必要です。まとまっていない時、何を話すかはっきりしていない時、話が長くなる傾向にあります。ひとことで何を言いたいのか、詰められるだけ詰めましょう。印象的な表現を工夫しましょう。

 そして、本番では余計なことを言わない、脱線しない意識を強く持つことも忘れないでください。

 効果的なスピーチの極意は、”短く” です。

(4)けじめをつけよ

 効果的なスピーチのために心がけていただきたいこと。最後は、「けじめをつける」ことです。

 ポイントは5つ。

・態度、行動のけじめ

 指名されたら反応を示すことです。返事をして、あるいは手をあげるなどしてさっと立ちましょう。無言で、もじもじしていては、いるのかいないのかわかりません。落ち着いて、適度にきびきびと決められた所へ移動します。話を終えた後も大切です。あいさつ、おじぎをした後、ゆっくりと周囲を見渡し、それから移動します。やはり、落ち着いて、適度にきびきびとです。話を終えたことで安心し、緊張がゆるんで、バタバタと席につく人がいます。周囲の雰囲気を損なうことになりかねません。要注意です。最後まで見られています。

・服装

 場にあった服装を意識してください。たとえ、カジュアルな服装でよい場でも、スピーチを頼まれているなら、それなりの服装で臨んだほうが無難です。いろいろな考え方の方が参加しているはずです。「スピーチするのに、何だその服装は!」と、たとえ一人にでも思われないようにしましょう。

・あいさつ

 あいさつとおじぎは丁寧に。最初のあいさつを意識して丁寧に行うと落ちつけます。また、最後のあいさつは特に意識し、落ち着いて丁寧に行うと印象的です。

・ことばづかい

 どんなに親しい人の集まりでも、おおぜいの前で話す時にはそれなりの気配りが必要です。崩しすぎないように心がけてください。ことばづかいは、話し手の教養と品位を表します。

・話し方

 場に応じて適切な話し方で話すようにしましょう。こうすれば必ずよいという方法がないのです。難しいですね。親しい場であまりにも堅い話し方では、雰囲気が盛り上がりません。一方、あらたまった場で崩しすぎてはひんしゅくをかうことになりかねません。会話調でよいのか、あらたまった話し方が必要か、態度は? 表情は? その場に対応して判断することが大切です。

 また、会合によっては、言ってはいけない、注意したいことば「忌みことば」があります。そのことばが不吉なことを連想させるので、慣習として話す際に控えることばです。主なものを紹介しますので、参考になさってください。

 

忌みことば

・結婚:

切れる、別れる、去る、離れる、繰り返す、破れる、壊れる、さめる、帰る、あきる

・新築:

 燃える、枯れる、壊れる、倒れる、傾く、流れる、飛ぶ

・弔事(不幸が繰り返えされることを連想させないように):

 かえすがえす、かさねがさね、またまた、おって、さらに

・その他(避けたほうが良いことばと言い換え例)

 閉じる(末期に通じる)=>結ぶ   
 するめ(「する」音がよくない)=>あたりめ
 塩(「死」の音)=>浪の花      
 醤油(「死」の音)=>むらさき
 九(「苦」の音)=>ここのつ     
 冷めないうちに=>温かいうちに
 ケーキを切る=>ケーキ入刀     
 閉会する=>お開きにする

 ベストスピーカへの道は、原則を踏まえ、場にあった話を、場に合わせた話し方ですることです。健闘を祈ります。

 

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