理事長ブログ「忘己利他」N7

ビジネスコミュニケーション「仕事がはかどる話し方のコツ」
 ◆よりよく生きるためのツール ~ 究極のコミュニケーション能力を磨く ~

改訂第2版「6.話は共同作業」

話力総合研究所 理事長

話力総合研究所 理事長
合宿研修会

(1)話せば聴くか?

 ことばを発すれば、相手は聴いていると、多くの人が誤解しているようです。あるいは、ことばを発したからには、「聴くものだ!」「聴くべきだ!」と思っているのかもしれません。ですから、職場などで、「話した」「聴いていない」と、時々「言った言わない」の不毛な口論がはじまるのですね。

 何らかの目的をもってことばを発するのでしたら、少なくとも相手を「聴き手」にしなければなりません。「聴き手にする」ということは、聴く意思を持たせること。「聴く気にさせる」ことです。そのためには、次のことに気を配りましょう。

① 聴こえる声で話す

 昼時の混雑しているそば屋でのことです。お客からお客へ店員が忙しく動き回っていました。中年の男性が私の隣に座りました。お茶を出されて、「天ぷらそばね!」と小声でことばを発しました。店員はお茶を置くや否や他のお客に向かっていました。案の定、私が食べ終えても、隣の男性の「天ぷらそば」は出てきません。いらいらが伝わってきます。店員に、「ねぇ、天ぷらそば、まだ?」店員が怪訝そうな顔をしています。「もういい、帰る!」その男性は出て行ってしまいました。2人の店員が話をしています。「あのお客さんの注文とった?」「いえ!?」

 そうなのです。ざわざわした中で、小声でした。本人は伝えたつもりでしょうが、相手には聴こえなかった。これでは独り言とかわりません。まずは相手に聴こえる声で話すことが基本です。特におおぜいの前で話をするときは、後ろまで聴こえているか確認しましょう。

② 相手の都合を考えて話す

 忙しい時に話をしても、聴いてもらえないかもしれません。何か他のことに気持ちがいっているときも同様です。特に肝心なことを話す時は、相手が聴ける状態かを考えて話すようにしましょう。話したいときに話すよりも、相手が聴けるときに話すほうが効果的です。

 日常でもそうですね。「疲れて帰ったときに、妻が一日のできごとをまくしたてる。聴いていられないですよ。うんうん言っていると。お父さんはいつも上の空なのだからと言われてしまう。」「好きなスポーツ番組を見ているところで、子供のことを話し出す。あとでその話題が出て、えっ、何のこと?と言うと、さっき話したじゃない。お父さんはいつも私の話聞かないのだからと言われてしまう」シニアの男性に多い愚痴ですね。

③ 注目させる

 どうしても今話したいのであれば、話に意識を向けさせる工夫が必要です。

④ 予告する

 何の話をするのかを伝えて、聴く準備をさせましょう。

⑤ 確認しながら話す

 一方的に話しても効果的ではありません。話しはじめるときも、話しながらも、聴いてくれているかどうか確認しながら話すようにします。

⑥ 相手を知り、相手に対応する

 相手の性格や興味などに応じて、効果があがるように工夫しましょう。「話の効果をあげるため、相手の心の法則に従って話せ」ですね。

 

 話の効果をあげるため、まずは「相手を聴き手にする」意識と努力が大切です。

(2)話の効果は誰が決める?

 話すからには、多くの場合、話す目的があるはずです。その目的を達成してこそ、一生懸命話した甲斐があった、「話の効果があがった」ということでしたね。たとえ、相手を聴き手にできたとしても、効果があがるかどうかは保証できません。また、どんなに上手に話しても、わかってもらおうと思って話して、わかってもらえなければ独り言とかわりません。協力してもらおうと思って、理路整然、滔々と話したら、相手が「しつこい!」と怒ってしまった。もしかしたら、話さないほうが良かったのかもしれません。話は相手を聴き手にするだけではだめなのです。上手に話すだけではだめなのです。目的を達成し、効果をあげるように話さなければなりません。

 では、この「話の効果」は誰が決めるのですか?自分で決められますか?「これだけ上手に話したのですから、みなさん理解できましたね?」と言えますか?「これだけ印象的に自己紹介したのですから、皆さん私の名前を忘れることはないですね」と言えますか?残念ながら、言えませんね。そうなのです。「話の効果は聴き手が決める」のです。もちろん、話の主体は話し手です。社会的に許容される範囲内であれば、どんな目的をもって、どのように話してもよいのです。つまり、話し手は「発言権」を持っています。しかし、話し手の目的が達成するかどうかの「決定権」は聴き手に握られているのです。

 話す時、話を聴く時、話し手と聴き手の間には、話の効果に影響を与えるいろいろな条件があります。親しいか、そうでないかといった人間関係。上司と部下、先輩と後輩といった社会関係、依頼する側、される側などの状況関係です。また、話し手、聴き手、双方の表情、態度、性格、性別、理解力なども話の効果に影響を与えます。さらに、聴き手は話を聴く時にある種の要求を話し手にしています。例えば、「忙しいので手短に話してほしい。」「専門家ではないので、わかりやすく教えてほしい。」「あなたの上司であるということをわきまえて話してほしい。」などですね。しかし、この要求は、多くの場合、ことばで表現されません。表情や態度、しぐさ、あるいはこれまでのかかわりから判断します。そして、聴き手が話の効果の決定権を握っているのですから、話し手はこうした条件や聴き手の要求を受け入れて、効果があがるように話さなければなりません。「聴き手に対応して話す」ということです。

 もちろん、聴き手に「媚を売る」「ごまをする」などということではありません。話の目的を達成するために、独りよがりにならずに工夫して話をする(「発案する」)ということです。聴き手はそれを自由に判断します。また、厄介なことに、話している間も聴き手の要求は変化します。「ちょっと聞き取れなかった」「意味が解らなかった」「そろそろ時間だ。結論を言ってほしい」「いったい、どうすればいいのか」などです。話し手は聴き手の要求の変化を的確にとらえて、それに対応して話をします。たいへん難しい作業ですね。

図  発言権と決定権

 聴き手が決定権を持っているとはいえ、話の目的を達成するために、まず話し手が主体的に努力する必要があります。また、話は共同作業です。決定権を握っている聴き手にも責任があります。聴き手は傾聴を心がけましょう。

(3)話の効果をあげる話し手の努力

 「話の効果は聴き手が決める」話の効果の決定権は聴き手にあるということをお話ししました。例えば、わかってもらおうと思って話して、わかってくれるかどうかは、聴き手次第です。たとえ、どんなに上手に話しても、残念ながら話し手自身が、「これだけ上手に話したのだから、わからないはずはない」と決めることはできません。

 とはいえ、話が伝わらないのをいつも聴き手の所為にしていてはいけません。話す目的を持っているのは話し手なのですから。話の効果があがるよう次のことに気を配って話すようにしましょう。

① 目的を意識して話す

 何のために話すのか?何のために話しているのか?話す時も、話している間も、常にこの意識を持ち続けましょう。一生懸命話しているときに、不快なことを言われた。カッとなって、余計なことを言ってしまった。「売りことばに買いことば」と言いますね。目的を忘れて口論してもむなしいだけです。冷静になってから、後悔するものです。

② 効果を予見して話す

 こう話したら?あ~話したら?話の効果があがるかどうか、先を見通して話すということです。皆さん、あまり意識していないでしょうが、なさっていますね。気持ちのわかってくれる人だから、情に訴えよう。理屈っぽい人だから、順序だてて矛盾なく、論理的に話さなければ。あ~いえば、こう言われるだろうから。。。今日は機嫌がよさそうだから、今のうちに話しておこう。機嫌が悪そうだから、後にしよう。いかがですか?こうしたことを、もっと意識的に行うのです。

 音声としてことばを発してしまっては、消すことができません。ことばを発する前に、「こう言ったら、どのように受け止められるだろうか?わかってもらえるだろうか?」などと、考えてからことばを発する習慣をつけましょう。余計なことを言ってしまう人、失言癖のある人はこの点が弱いですね。こう話したらどう聴かれるか?話の目的を達成するか? 先を見通して、相手に応じた適切な表現をとることです。

③ 必要の法則を守る

 必要の法則とは、「必要な時に、必要な人に、必要なことを、必要なだけ、必要な場で、必要な方法で」話すことです。目的や状況、相手によって、この必要の法則を生かしてください。

「必要な時に」

より効果的なタイミングがあるはずです。話をするタイミングを考えましょう。

「必要な人に」

話をする人の順番を間違えると、問題がこじれるケースがありますよ。「私は聴いていない!」と言われて、波紋を投げたり、人間関係がぎくしゃくしたり、物事が進まなくなることがないように心がけましょう。

「必要なことを必要なだけ」

余計なことを話さない。目的外のことを話さない。目的に対して効果的なことを話す。人はついつい、話したいことを話したり、余計なことを話しがちです。「効果があがることを話す」意識を強烈に持ちましょう。

「必要な場で」

おおぜいの前で話してもよいことか?周囲に聴かれないように配慮すべきか?「必要な場」に気を配りましょう。

「必要な方法で」

電子的な方法で伝えれば楽ですね。しかし、内容、目的、相手によっては、伝える方法を考えなければなりません。メールで済ませてよいか?電話をかけたほうが良いか?相手に会って話すべきか?あるいは、会って話したり、電話で話したうえで、備忘録としてメールを送るか? より効果的な方法を用いましょう。

④ 態度に気をつける

 話を聴いてもらえるかどうかは話す時の態度で決まると言っても過言ではありません。話す時の態度にも気を配りましょう。態度については、あらためてお話ししますが、要は好感の持てる感じの良い態度で話すことです。

⑤ ことばづかいに気を配る

 話はことばづかいで評価されるものです。最近のことばの乱れは、気候変動と同じぐらい深刻です。「なので~。」「~の形となっております。」「お客様のおっしゃられましたことは~」「資料の方~」などですね。不快なぶっきらぼうな表現。冗長な表現。あげていくと、きりがありません。ことばづかいについては、あらためてお話しします。年齢や立場にあった適切なことばづかいを意識なさってください。

⑥ すべての原則を守る努力をする

 いかがでしょうか?話の効果をあげるための話し手の努力。たいへんですね。話力のすべての原則を守る努力を続けましょう。

 最初からすべては無理ですね。しかし、一歩一歩より効果があがるように意識的な努力を継続なさってください。コツコツ努力です。必ず変わります。必ず成果が出ます。ともに努力してまいりましょう。

(4)中身で勝負したいなら、態度に気をつけろ!

 話す時の態度が大切だとお話ししますと、「そうかもしれないが、態度は枝葉。中身が大事。中身で勝負!」などと反論されます。特に自信家はそうですね。おっしゃる通り、「中身」、話の内容が大切です。薄っぺらな内容では効果的ではありません。内容で勝負するのです。

 しかし、ちょっと待ってください。内容で勝負するためには、その前にあるハードルを越えなければなりません。そのハードルが話す時の「態度」です。「態度は視覚に訴える言語」と言われます。内容の良し悪しを評価するには少々時間がかかります。一方、態度は一瞬で評価されます。聴き手が話し手を見たときに「快」「不快」を与えます。「不快」に感じたとき、その人の話を聴こうと思いますか?どんなに良い内容を持っていても、どんなに経験を積んでいても、それを生かすことができなくなります。

 話し手がズボンのポケットに両手を突っ込んで、サングラスをかけ、マスクをしたまま話しだしたら、いかがですか? 皆さんは話を聴こうと思いますか? せっかく良い内容を持っていても、話す前に聴き手の耳を塞いでしまう結果になりかねません。あるいは、良い内容を適切に評価してもらえないかもしれません。「あの人の話、どうも感じ悪かったね」「偉そうなこと言ってたね」「人を小ばかにしているよね」などですね。「態度で評価される」のです。ですから、内容を持っている人ほど、内容で勝負できる人ほど、聴いてもらえるように話す時の態度に気をつけることが大切なのです。「態度は話の効果を左右する」のです。

 自分のことはなかなか見えないものです。気づかないものです。態度に気をつけて話すには、意識と努力が必要です。某製薬会社役員のTさんは、おおぜいの前で話す時、ズボンのポケットに手を入れてしまう癖がありました。話力講座を受講し、そのことを指摘されました。Tさんは何とか改善しようと努力しましたが、長年の癖です。なかなか直りません。そこで、Tさんは覚悟を決めました。手を入れられないように、ズボンのポケットを縫ってしまったのです。時にはこうした努力も必要かもしれませんね。

 「態度に気をつけて」話をする意識と努力。威張った態度、だらしない態度、落ち着かない態度、卑屈な態度、気取った態度など。要は相手、聴き手を不快にさせないことです。具体的なチェックポイントは、「背目手足服表情身だしなみ癖なくせ」です。「3.好意的な人間関係を築く8つの原則 (2)態度に気をつけて」をもう一度ご覧になってください。話すにふさわしいよい内容を、感じよく、好感の持てる態度で話すようにしましょう。

(5)決定権を握っている聴き手の努力

 「話の効果は聴き手が決める」「話の効果の決定権は聴き手にある」と申しました。だからといって、聴き手がこの決定権をふりかざし、話がわからない、話し手の真意をくみ取れないことを話し手の所為にしていても何ら生産的ではありません。「話の効果の決定権は聴き手にある」という原則は話し手のためにある原則です。聴き手のための原則は、「聴き手は決定権を持っている責任がある。」ということです。聴き手には決定権を持っている責任を果たす努力が求められるのです。

 話は話し手と聴き手の共同作業です。話し手は、聴き手にとってわかりやすいように、聴きやすいように、受け止めてもらえるように、聴き手に対応して効果的に話す努力をします。一方、聴き手は話し手の真意を推し量りながら、熱心に耳を傾けて聴く努力をします。両者の努力によって、はじめて「効果的な話」になるのです。

 効果的な聴き方については、あらためてお話ししますが、少なくとも熱心に聴く姿勢が大切です。そして、聴き手の「傾聴」の努力は必ず報われます。「傾聴は愛のはじめなり」道元禅師(1200年-1253年)のことばでしたね。相手の話をよく聴く結果として、相手から好意を持たれるのでした。好意的な関係を築ければ、自分が話をするときの効果も大きくなります。話を聴いてもらえます。話を肯定的にとらえてもらえます。

 聴く側に回ったときに、相手の話に耳を傾け、考えながら集中して聴く。真意を推し量りながら聴く。「傾聴」を心がけましょう。

 

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