ブログ

理事 田村 聡 の「講義力をともに高めよう」3

第 3 回 『 話力とは何か ②』

 前回は、話力の定義および三要素について講義のポイントを学びました。今回は「話力の基本要素を高める」の項目を考えましょう。

 この項目では話力の三要素をそれぞれ高めるための具体的な方法を学びます。テキストをご覧になっておわかりのように、数多くの項目が並べられています。そして、各方法論の重なり合う部分が大きく、それぞれが深く関連づけられています。それだけに、講義しにくい箇所ともいえるでしょう。方法論をひとつひとつ講義していくと単調になり、受講生が飽きてしまいかねません。そこで、まずは複数の項目を抽象化してまとめる努力をしてみましょう。これからご紹介するのは私なりの工夫であり、絶対的なものではありません。これを叩き台にして、皆さまが独自の方法を編み出してくださるよう願っています。

 「心格力を高める」は7つの項目から成り立っています。最初に書かれている「すべての原則を守ることから始める」は、これから学んでいく話力のさまざまな理論をまずは実践してみるということです。実践してすぐに効果があがらないかもしれないけれど、少なくともそれ以上に人間関係が悪化することはないという点も伝えるとよいでしょう。残りの6つの項目を大きく2つにまとめると「人からの刺激を受ける」(その道のトップから学ぶ、忠告してくれる人を多く持つ、異質な人との出会いを大切にする、)「自己を深める」(内省する、時々静かに自己をふり返ってみる)というとらえ方ができます。それぞれについて講師が実践している具体例を挙げ、「双方の相乗効果によって心格力が高まる」と結べば、短時間で講義することができるでしょう。

 「内容力を高める」は8つの項目です。この中の6つは「インプット」(体験する、観察する、読む、聴く)と「アウトプット」(話す、書く)に分けられます。大切なのは、テキストの図の中心にある「考える」「感じる」の部分です。インプットした内容を自分の頭で考え、感じてからアウトプットすることにより、内容力が高まります。逆もしかりです。アウトプットしたものを、再度考えて感じる(ふり返る)ことが重要です。そして、不確かなものやあいまいなものについては、インプットしなおします。このような地道な努力が内容力を高めていくのです。

 「対応力を高める」も同様です。ここに書かれている5つの項目は、「心格力を高める」で挙げられているものとよく似ています。そこで「人から学ぶ」(他人を観察して具体的な方法をつかむ、他人からアドバイスを受ける)「自ら努力する」(理にかなった方法を工夫する、意識的な体験を積み重ねる、自分自身の短所を知り、その改善に努力する)の2つにまとめ、この相互作用で対応力が高まっていくことを講義します。話力講座での実習が対応力を高める絶好のチャンスになることを伝えると、実習へのモチベーションが上がることが期待できます。

 最後に、この項目をどのように締めくくるのかもしっかり考えておきたいところです。先ほどもふれたように、三要素を高める方法はそれぞれオーバーラップしています。つまり、心格力を高める努力が内容力、対応力を高めることにつながり、内容力を高める努力が心格力、対応力をたかめることにもなります。そして、対応力を高める努力が心格力、内容力を高めることにつながるのです。細かい表現は異なっても、これらはすべて密接に結びついているといえるのです。そして、この項目は講師としてどのように話力を高める実践をしているのかを示す絶好の機会です。受講生にとっては「このようすればいいのか!」という気づきにもなり、それが貴重なお土産にもなるのです。実際に役立つものを伝えることが話力講座では求められます。空理空論ではなく、自らの努力を見せることにより、受講生にとってプラスになるものを提供できたら…といつも願っています。

 次回は「話力と人間関係」の項目を深めましょう。

TOP