第1回 イントロダクション
「住する所をなきを、まず花と知るべし」
話力に生かそう風姿花伝
「下手なビジネス書を読むくらいなら風姿花伝を読め」とは良く耳にしていました。
結局、私が手に取ったのは今から八年前。研究所の夏冬のインストラクター向け合宿研修会には毎回参加していましたが、話力研究会には仕事の都合でどうしても欠席が続いていました。
毎回、研究会に参加している方との力の差を感じ、せめて自分のバックボーンになるような本をと、強く求めた末に辿り着いた一冊です。一読し驚愕しました。表現する者にとって必読の書だと思いました。
そもそも「風姿花伝」とは何でしょうか――今から六百年前の室山時代に世阿弥によって書かれた能の秘伝書です。「風姿花伝」から学ぶべきものは多くあります。スピーチやプレゼンにも生かすこともできます。
これから月に一つずつ話力で生きるであろう世阿弥の言葉を紹介していきます。
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「住する所をなきを、まず花と知るべし」
そこに留まり続けるのではなく、常に変化することが芸術の中心(花)である。
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世阿弥は新しいもの、珍しいものこそが人の心を打つ、と繰り返し書いています。私たちも現状に安住することなく、いつもより良い変化を遂げていたいものです。
このシリーズでは「タチバナ教養文庫」版を使用します。「風姿花伝」は文庫では岩波、角川と出版されていますが「風姿花伝」だけではなく「花(か)鏡(きょう)」も収録している「タチバナ教養文庫」をお薦め致します。
小西甚一編訳 たちばな出版社 1,320円(税込)