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理事 林野浩芳の「話力に生かそう 風姿花伝」2

第2回 「離見の見(りけんのけん)」

私が最初に「これは凄い!」と思ったのは
「離見の見(りけんのけん)」でした。

 世阿弥はこう記しています。

「舞に、目前心後(もくぜんしんご)と云うことあり。目を前にみて、心を後ろに置けとなり」 

「見所(けんしょ)より見る所の風姿は、わが離見なり。
しかれば、わが眼(まなこ)の見る所は我見(がけん)なり。
離見の見にはあらず。
離見の見にて見る所は、すなわち見所(けんしょ)同心(どうしん)の見なり」

 見所(けんしょ)とは能の観客席のこと。つまり、自分の芸を観客の意識で見ろ、観客席で見るように自分の芸を意識すべし、ということです。

「目前心後(もくぜんしんご)」とは目は前を向いていても、心は後ろにおいておけ。後ろ姿を見ていないと、自分の本当の姿に気が付かない、と説いています。

 自分を客観的に、冷静に見て分析を図る。これこそスピーチやプレゼンでの極意ではないでしょうか。講座でも紹介をしています。

 世阿弥は

「かへすがへす、離見の見をよくよく見得して、眼、まなこを見ぬ所を覚えて、左右前後を分明(ふんみょう)に安見(あんけん)せよ。
さだめて花姿玉得(かしぎょとく)の幽舞(ゆうぶ)に至らんこと、目前の証見(しょうけん)なるべし」

と結んでいます。

 離見の見で見てこそ、花や玉のような優美な芸となる、のです。

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