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理事長ブログ「忘己利他」N16

ビジネスコミュニケーション「仕事がはかどる話し方のコツ」
 ◆よりよく生きるためのツール ~ 究極のコミュニケーション能力を磨く ~

改訂第2版

理事長あいさつ

一般社団法人 話力総合研究所 理事長
感謝の集い 理事長あいさつ

「15.おおぜいの前で話せる力を磨け」

(1)逃げられない! 恥かけない!!

 皆さんは、スピーチやプレゼンテーションの機会がありますか? おおぜいの前で話す機会が多く、スピーチやプレゼンの力をつけることを目標にしている人もいるでしょう。

 一方で、「まったく機会がない」という人もいるかもしれません。本当にそうですか?スピーチ、プレゼンというとあらたまって考えがちです。しかし、ちょっとした会合で複数の人を前に自己紹介した経験は多くの人が持っているのではないでしょうか。その際、いかがでしたか?あがりましたか?うまくいきましたか?なかには失敗した人もいるでしょう。スピーチしたくないですか?慣れていない人にとっては、いやですよね。逃げたいですよね。しかし、皆、しますから、逃げられないですね。そして、最近は皆それなりに話します。恥かけないですね。ですから、来るべき時に備えておかなければなりません。

 慣れている人は話せますね。最近はどちらかというと慣れている人に問題があるかもしれません。長々と話してしまう。その場に関係ないこと、聴衆が求めていないことをひとりよがりに話してしまう。「またか?」「いつも長いな」「早く終わらないかな」と思われていることが多いですよ。「話したいことを話すな。効果があがることを話せ!」ですね。

 おおぜいの前で話す力をつけるには、まず現状を知ることです。そしてこれまでお話してきました「話力」の原則を守ること。表現の原則。態度は視覚に訴える言語。ことばづかいに気をつけて、等々。意識なさってください。そして、日常会話、おしゃべりならできますね。時々、おしゃべりが苦手という人もいますけれど。おしゃべりとスピーチ・プレゼンの違いを意識することが大切です。

 おしゃべりとスピーチ・プレゼンとの大きな違いは、おおぜいの前で話すということです。それから、どちらかというと一方的に話すことが多いです。そして、主催者や聴衆から期待されたり、注目されますね。そのうえ、内容や時間、聴衆、会場などの制約があります。話す内容や時間が決まっていることが多いですね。聴衆や会場も話し手の自由にはならないでしょう。のびのびと、話したいだけ話すわけにはいきません。そうした制約の中で話して、うまくいけば自信がつきます。聴衆に評価されます。おしゃべりがどんなに上手でも、それほど評価されないでしょう。制約の中で効果をあげるから評価されるのですね。ぜひ努力なさってください。

 スピーチ、プレゼンにはおしゃべりにない、良い点がひとつあるのです。それは、「準備ができる」ことです。おしゃべりは相手や内容に応じて即応して話さなければなりません。いわゆる「即題」です。しかし、スピーチ、プレゼンは事前に準備できるのです。「いや、突然指名されることもある」と反論しますか?これは、「突然指名されることもあるから」と予見して、事前に準備するのです。会合に出席したら、「ひとこと挨拶を」あるいは「ひとりずつ自己紹介を」と言われるかもしれない。そのように先を見通して準備をするとよいでしょう。

 私は講演会などに聴衆として参加する場合でも、万一講演者が都合がつかなかった場合に、主催者から「何か話してほしい」と言われることを想定して準備して臨んでいます。もちろん、話力についてはいつ、いかなる時に依頼されてもすぐに対応できるよう日頃から準備しています。とくにスピーチ・プレゼンの機会の多い方はぜひ心がけてください。

(2)おおぜいの前で話す力をつけるには?

 多くの人がおおぜいの前であがらずに話したい。効果的に話したい。皆が注目するように話したいなどと思っているようです。

 一方で、話せる人は特殊な人と思っていませんか?

 「俺はダメだけど、お前は図々しいから大丈夫」などと言っていませんか? 私は、話の勉強を始めた直後からスピーチの依頼が増えました。同僚や友人の結婚式の披露宴です。依頼されたとき、必ず「私でいいのか?」と尋ねました。たいていの返事は「他にいないんだ。君のように口八丁なやつ。」「口八丁」とは失礼ですよね。人知れず努力して話せるようになっているのですけれど。。。「特殊能力」と思われていたのかもしれません。

 しかし、そんなことないですね。1:1なら話せますね。1:2はどうですか?1:5は?1:10、20、30?どこで線を引きますか? 本来、誰でもおおぜいの前で話せるのです。私は、「おしゃべりのできる人は、必ずおおぜいの前で話せる」と言っています。話せるか、話せないかでいえば、話せますね。要は効果があがるかどうかです。効果を考えると、慣れている人に問題があるかもしれません。長々と聴衆が望まない話をする人が目につきます。

 効果的に話す力をつけるには、どうすればよいか?やみくもに磨こうとしても思うようにはいきません。一方的に話してしまったり。長々と話したり。目的と関係ないことを話したり。変な癖をつけてしまいがちです。

 まずは、自らの「話力」を高める努力が必要です。話力を高めるには、話力の三要素をそれぞれバランスよく高めるのでしたね。話力の三要素は??? そうですね。心格力、内容力、対応力です。話力の高め方については、第1章「話は何のためにする」でお話ししました。もう一度ふりかえってみてください。そして、おおぜいの前で話す際は、心格力としての「品位」、内容力からくる「余裕」、対応力としての「気迫」を意識しましょう。

① 品位を磨く

 品位を磨くためにはまずは教養を高めること。「教養」というとたいていの人は知識と考えるかもしれません。いわゆるacademic intelligenceですね。ここでいう「教養」はsocial intelligenceです。社会性を磨くことです。常識、良識を身につける。倫理観を持つ。独りよがりにならないよう問題意識を持つ。他人を意識する。そして、謙虚に、誠実にですね。言行一致が大切です。おおぜいの前で「ルールを守りましょう」と話した本人が、会場を後にして、会場前の交差点で信号無視をしていた。「あいさつをしましょう」と講演では話すのに、自ら先にあいさつをしているところを見たことがない。「相手の良いところを見つけ、ほめるようにしましょう」言っている本人がまったく人をほめない。これでは説得力がありません。

② 余裕を持つ

 話の内容に自信を持てれば、落ち着いて話せるはずです。余裕を持てると、話しながら自分の話を順序だてて整理することができます。話している自分の話を聴くことができます。話している自分の話を聴きながら評価して、軌道修正することができます。

 そのためには、徹底的に準備です。以前にお話しした「氷山の原理」を実践することですね。たとえどんなに準備しても暗記するのでは途中で破綻しかねません。理解することが大切です。そして理解のレベルをあげましょう。理解のレベルには言語的理解、論理的理解、絵画的理解、行動的理解、納得的理解があります。

 言語的理解は、例えば「コミュニケーションとは、ことばや文字などを介してお互いの意思を伝達しあうこと」などと、ことばで理解することです。

 論理的理解は、ことばの関係性で理解することです。例えば、「トランプの4種類の絵札から1枚持ってきました。このカードは、ハートでも、クラブでも、スペードでもありません。」 持ってきたカードはダイヤだということがわかりますね。

 絵画的理解は頭の中に絵を描けるほどに内容を把握することです。

 行動的理解は体が自然に動くほどに、ものごとを定着させることです。

 納得的理解は「なるほど」と腑に落ちている状態ですね。

 できることなら、言語的理解、論理的理解から絵画的理解や行動的理解、納得的理解まで深められれば、ゆとりをもって話せるようになるでしょう。

③ 気迫で話す

 「これだけは言おう。これだけはわかってほしい。」と強烈に思えるときは、なんとか話せるものです。ですから、おおぜいの前で話す時は、そういう気持ちになるとよいですね。否、そういう気持ちに自らを奮い立たせるのです。しむけるのです。「俺がやらねば誰がする。俺が言わねば誰が言う。」「今やらねばいつできる。今言わねばいつ言える。」そういう気迫をこめて、役割を果たすようがんばってください。

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