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理事 田村 聡 の「講義力をともに高めよう」6

第 6 回 『対話における態度』

 さて、昼休みが終わって午後の講義が始まります。人間の生理現象として、昼食後は眠気が出やすいものです。時間に余裕があれば、午前中の感想をきいてみたり、全員で軽く体をほぐしてもよいでしょう。

 この項目では、態度の重要性について学びます。主に話し手にスポットを当てて講義を展開しますが、実は聴き手にも同じことが言えるのです。「対話における態度」というタイトルからも、そのことがうかがえます。話し手、聴き手双方が意識しなければならない内容です。

(1) 態度

 ここで大切なのは、態度は「目に訴える言語」であるということです。人間の五感の中でも、目から受ける刺激が最も大きく、とりわけ態度は目に映りやすいだけに要注意です。その重要性について、冒頭でしっかりと講義します。そして、ことばと態度の違いについてもふれておきましょう。ことばは、一応理性を通して選ばれたものが出てきます。理性というフィルターを通しているということですね。中には、理性を通さないで出てくることばもあります。火傷をしたときに思わず「熱い!」と言ってしまいます。これなどは典型的な例です。これに対して、態度はその人の感情が直接あらわれやすいものなのです。無意識に出てしまいやすく、「態度は感情から作られている」という言い方もできます。態度が話の効果にも大きな影響を及ぼします。

(2) 話の効果と態度

 この項目では、話の効果と態度との関連について講義を進めます。非常に密接なつながりがあること、態度をおろそかにできないことを講義の中で丁寧に掘りさげていきましょう。

① 態度で評価する

 電車の中でふんぞり返って座っている人を見かけたら、どのように思いますか。おそらく多くの人は「嫌だな」とマイナスの評価をするのではないでしょうか。買い物をしてお店を出たときに、こちらの姿が見えなくなるまで店員さんがお辞儀をしてくれていたらどうでしょう。「すばらしい店員さんだな。また来よう」と好感を抱きますよね。

 このように、誰もが態度を通してその人を評価しているのです。ここでは身近な例を出すとわかりやすいでしょう。そして、評価するのに特別な知識は必要ありません。また、誰が評価しても大きな差はありません。子どもでも大人でも同じように評価できるのです。この評価が「話の効果を大きく左右します」と述べて、次の項目に移ります。

② 態度は話の効果を左右する

 いかに話の内容がすばらしくても、話し手の態度がよくなかったら効果のあがる話にはなりません。聴き手は話の内容よりも態度で評価するからです。「内容<態度」これを板書すると印象に残ります。

 私の大学時代に、教壇の上から最前列の空いている机に片足を乗せて講義する先生がいました。講義はとても丁寧で、学生に対しても敬語を使っています。しかし、空いているとはいえ、学生が使う机に足を乗せる態度が不快でした。ある時、その先生が講義に関するアンケートをとったのですが、ほとんどの学生が先生の態度に「不謹慎だ」「失礼だ」と書いていました。先生は非常に驚いたそうです。「悪気はなく、単なる癖でした」と謝罪して、以後はその癖がなくなりました。

 態度にまつわる例があれば、講義の中に盛り込んでみましょう。ここから先は方法論です。

(3) 態度に気をつけて

① 好ましい態度

 ここでは、聴き手に親しみや落ち着きを感じさせ、安定感を生み出すためのポイントが出ています。これらは実習ですぐに生かせるため、講義しながら講師がモデルを示すとよいでしょう。時間に余裕があれば、実際に全員で実践してみるのも効果があがります。そうすると、講義に変化も出てきますね。

② 注意したい態度

 テキストに書かれている通りです。これらに共通しているのは「不快感を与えてしまう」ということです。聴き手の立場になったときに、無意識に腕組みをしてしまうことがあります。これは話し手にとって圧迫になるものです。聴き手の態度にもふれると講義が広がります。

③ 態度に関連して気をつけたいこと

 態度に付随して意識しておきたい点です。話し手自身は表情を見ることができません。表情は聴き手のためにあることをおさえましょう。また、癖も要注意です。先ほどの大学の先生のように、その気はなくてもマイナスの評価をされる癖があるということも講義の中で伝える必要があります。

 今回は非言語表現の態度について学びました。次回は言語に視点を移して「表現の原則」について考えていきましょう。

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